[M&A戦略と法務]

2013年5月号 223号

(2013/04/15)

知的財産デューディリジェンスの最近の傾向と契約実務

 淵邊 善彦(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

はじめに

   知的財産を対象としたデューディリジェンスは、一般に「知的財産デューディリジェンス」と呼ばれている(以下「知財DD」という)。この分野は、知的財産の専門家である弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、コンサルタント等が知的財産について、ビジネス、技術、法務、会計、税務等総合的に調査・評価するものであり、近年実務においてその重要性が認識されるようになっている。

   業界再編につながるような大型案件やクロスボーダー案件においては、特に詳細な知財DDが行われ、契約交渉においても焦点の一つとなることが多い。また、ベンチャー企業や中小の製造業を対象としたM&Aでは、知的財産が唯一の重要資産となり、その内容に大きな関心がもたれる。これらの企業においては、知的財産が企業価値の源泉であり、企業そのものより知的財産の取得がM&Aの主な目的である場合もある。クロスボーダー案件においては、M&A実行後のプロセスで、重大な知的財産の問題が表面化しているケースも散見される。

   このように、M&Aにおける知的財産への関心は高まっているが、他の資産に比べ知的財産については特に慎重な調査が必要となる。なぜなら、知的財産は無形資産であり、不動産や動産のように有体物として調査することができず、かつ最新の法令、判例、商慣習等に基づく高度な専門知識や豊富な経験が要求される分野だからである。知的財産の価値評価の手法は未だ確立しておらず、権利の帰属が不明確な場合も多い。また、限られた期間と費用で行わざるをえないため、ポイントを絞った効率的な調査が求められる。

   本稿では、知財DDについての一般的な解説は他の文献に譲ることとし(注1)、最近の法改正や実務の動きに関連して問題になることが多い法的な留意事項を中心に述べることとする。その上で、知財DDの結果を最終契約においてどのように反映し、手当てするかについても合わせて検討する。

知財DDにおける留意事項

1 権利確認
 

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