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[M&A戦略と法務]

2014年1月号 231号

(2013/12/15)

M&Aにおける税務トラブルへの対処法

 内海 英博(TMI総合法律事務所 パートナー
 日本国及びNY州弁護士/日本国及び米国公認会計士)

はじめに

  M&Aにおいては、法務面の知識のみならず、税務面の知識も必須であるといえます。数十億円あるいは数百億円単位の納税の要否が問題になることが少なくないからです。特に、かつて「抜かずの宝刀」といわれて事実上発動されてこなかった組織再編成に係る行為計算否認規定の適用(いわゆる「包括否認規定」法人税法132条の2)が昨今当局により発動されるようになったことに鑑みると、当局からの否認リスク、税務トラブルを常に念頭においた上で、プランニングを進める必要があります。私はこれまで様々なM&Aに法的及び税務的側面を有機的に結合させる形で関与してきました。また、M&A自体には関与していないが当局とのトラブルになって初めて関与した案件も多くあります。以下、それらの経験を踏まえて、M&Aにおける税務トラブルへの対処法の概略を記します。

意見書作成

  税務当局の指摘に疑問を感じたとき、まずは納得するまで当局の説明をきき、その上でこちらの主張をしていくことになります。こちらの主張が合理的であるのに、納得してもらえない場合、そしてその金額が大きい場合には、まずは、税務意見書という書面の形で、当局に申入れをすることが考えられます。税務調査の段階で、弁護士あるいは税理士が税務意見書を出すことによって、当局側は「この案件は専門家が慎重に検討して、このまま主張を通すと税務紛争に発展する可能性がある」という認識をします。その結果、当局内部で審理課等も交えてより慎重な検討がなされ、「納税者側の言っていることは筋が通っているから、紛争になった場合に勝てないかもしれない」という懸念が生じれば、当局の対応が変化するケースもあります。意見書を当局に出すかどうかは慎重に考えなければいけませんが、少なくとも弁護士等に相談しており、意見書ももらって理論武装している姿勢をみせるだけでも、状況の改善につながる場合があります。

  意見書は、当局の主張に対して法的、場合によっては事実関係の見地から反論を行うということです。調査の手続きの不当性があれば、それも併せて主張していきます。仮に意見書ではなく、口頭ベースで反論した場合、伝言ゲームで、それが現場の調査官から当局の上の方に伝わっていくに従って、当局側に有利なような形で歪曲して伝わっていってしまう可能性があります。その場合、実際に更正をするかどうかの決裁をする当局の上司は、誤って伝えられた事実関係や法律関係を基に判断をする可能性があります。

  これに対して意見書という形で書面を出して、上司の方に直接その書面を読んでもらう形にすればそういう心配はありません。私の経験でも、こちらの主張・事実関係をはっきり明確にまとめた意見書を出すことによって、法律関係・事実関係がクリアになり、当局としても更正をしないことにしたケースが多くあります。

意見書を出すタイミング

  専門家による意見書の提出は、問題点が顕在化していない早期の段階で提出することは実際的ではありません。他方、提出が遅すぎても、税務当局が既に課税の方針を固めてしまっていて、せっかくの意見書の効果があまり期待できません。そこで通常は、税務調査の中間報告の前後ぐらいの段階で出すということが効果的であると考えます。企業担当者と専門家は、調査が成熟して争点が検出された段階で、十分協議を行い、タイミングを見極めた上で、意見書を提出することが望ましいといえます。また、争点が多い案件や調査期間が長期にわたる案件については、税務調査の段階に応じて、複数回に分けて意見書を提出したり、大学教授、弁護士、税理士など様々な立場の専門家の意見書を提出することなども有効です。

  なお、企業は、なるべく早期の段階から専門家に相談を行い、意見書のドラフトを保持しておくことにより、争点を正確に把握して調査に応じることが可能になりますし、意見書が必要になった段階で、素早く意見書を提出できるというメリットを得ることが出来ます。意見書のドラフトは、税務当局の対応に合わせてアップデートしておくことが望ましいでしょう。

 

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