[M&A戦略と法務]

2015年12月号 254号

(2015/11/17)

組織再編と取締役の責任

 戸澤 晃広(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

1 はじめに

  本稿では、組織再編における取締役の経営判断について、近時の裁判例の分析から、取締役の善管注意義務違反を問われるリスク、及びそれを回避するために必要な要素について、以下の2つのケースを例にとって検討する。

CASE1
  A社は、不動産賃貸業のフランチャイズ事業を展開し、マンスリーマンション事業等を行うB社の発行済み株式総数の約3分の2を保有していた。A社は、グループの競争力強化のため、B社を、A社の完全子会社であるC社に合併させることとし、存続会社を引き続き完全子会社とするため、B社の株式の任意買取りを行うこととした。A社は、スムーズな買取りのため価格を払込金額と同額の一株5万円として買取りを行った。なお、その後監査法人にB社の株式価値算定を依頼したところ、一株当たり1万円との結果であった。

CASE2
  時計の製造販売事業を営むX社は、時計等の小売を行うY社を買収することを検討した。Y社は債務超過の状態にあり、監査役会は買収に対し反対する旨の意見書を提出したが、X社の取締役会は、Y社買収により製品の販路が確保できること、Y社はZ社から支援を受けており再生可能であること等を理由として、買収を決議し、Y社の株主から株式の無償譲渡を受けた。X社はY社による1億円の増資を引き受けたが、この出資金はZ社に対する債務の弁済に使われ、ほどなくY社及びZ社は倒産した。なお、X社の筆頭株主は、Z社の代表取締役であった。

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