※本記事は、M&A専門誌マール 2023年10月号 通巻348号(2023/9/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。
累計の成約件数約140件、取引金額で約700億円 京都銀行は2001年、地方銀行の中では早期に、本部の法人部門においてM&A業務を開始した。初期段階では専任の担当者を置かず、法人部門が外部のM&A専門機関と連携する形をとっていた。その後M&Aを法人営業の中核業務の1つに据えることを決め、自行での専門知識の蓄積と人材の育成を重ね、自行で業務を推進できる体制を構築してきた。
大きな転換点となったのが、2007年に法人金融部(当時)にM&A推進担当の専任者を配置したことだ。2008年以降に成約がコンスタントに出始めるようになり、2020年からは安定的に年間約20件の成約案件が生まれるようになった。2001年以降の累計実績は、成約件数が約140件、取引金額ベースで約700億円だ。従って、成約1件あたりの取引金額は平均すると約5億円になる。中小企業の事業承継に関連するM&Aが中心だが、近年では
プライベート・エクイティ(PE)ファンドへの売却案件、
カーブアウト案件、取引先の
MBO、取引先の事業多角化のための戦略的買収といった多彩な案件を扱っている。
2023年現在、M&A関連業務を担当する「法人総合コンサルティング部」内のM&Aグループには専任者が現在17人所属している(図表1)。
【図表1】法人総合コンサルティング部の組織・役割法人総合コンサルティング部 | | | 統轄・推進グループ | |
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| | ・課題解決型営業の推進 ・シンジケートローンの推進 ・SDGs、サステナブル支援に関する業務 | ・業種別営業(医療・特定法人等)の推進 ・事業承継、事業保険に関する業務 |
| | M&Aグループ | |
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| | ・M&Aに関する業務 | |
| | 創業成長支援グループ | |
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| | ・ベンチャー新規事業支援、産学連携、IPO支援業務 ・ビジネスマッチングに関する業務、人材紹介業務 | ・補助金、助成金に関する業務 ・きぎょうサポートオフィスの運営に関する業務 |
| | 新規開拓グループ | |
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| | ・新規取引先の開拓 | |
(出所)京都銀行(図表2、6も同じ)
京都銀行は第7次中期経営計画の期間中(2020/4~2023/3)に、「M&Aグループ」を3つのチームに分け、M&A関連業務の推進体制を見直した。
中核の「Middle企業戦略チーム」には現在、9人のメンバーが所属している。主に中堅企業と中小企業をターゲットにしており、事業承継案件を中心に扱う。また、同チームは医療業界と不動産業界の2つの業界特化型M&A戦略も担当している。「Large企業戦略チーム」(4人)は京都・大阪都市圏の上場企業・中堅企業を主要な顧客とし、取引先企業の海外進出支援も兼ねた
クロスボーダー案件、PEファンド案件も手掛けている。さらに、京都銀行の首都圏や東海圏などの府外店舗とも連携を深めながら、府外企業への提案活動も行う。さらに、「統轄・情報開発チーム」(4人)は行内外に横串を指す組織で、金融機関やM&A専門会社、コンサルティング会社、PEファンドと連携する役割を担っている。
「M&Aグループ」以外にも、社内承継や親族内承継のコンサルティングを担当する「事業承継チーム」や支店と本部の情報連携を円滑にするためのエリア担当者とも情報連携が密に行われる仕組みを構築している。
2023年度も好調に推移
図表3は3年間の中計期間毎のM&A業務の累積の実績を5期分(15年間分)示したものだ。
足元でもニーズは多い。コロナ禍前の2017年度から2019年度にかけての3年間の実績では、京都銀行が譲渡側のアドバイザーとして契約した年間案件数は3年間ともに13件。しかし、コロナ禍の2020年度1年間で26件と、その前の3年間の年間実績比で2倍に急増した。2021年度と2022年度には一旦案件数が落ち込み反動減となったものの、2023年度の4月以降は再度増加基調に転じているという。「新型コロナウイルスの流行により、事業承継を起点としたM&Aニーズが急増した。2021年度と2022年度は徐々に落ち着きを取り戻したものの、近頃では再び増加しており、直感的には過去になかったくらい、多くの相談を頂いているとの感触がある」(京都銀行営業本部法人総合コンサルティング部M&Aグループ・石川紘平部長代理)との手ごたえを示す。
約350社と提携関係、地銀間連携が特に強み 京都銀行の大きな特徴が、多数の外部提携機関と、双方向の情報交換を重視している点だ。現在、約350社の提携先と案件の紹介に関する包括的な
秘密保持契約を締結している。