[Webインタビュー]

(2014/10/22)

【第46回】【キーストーン・パートナース】議決権を集め、企業再生のプロとして不振企業に経営改善策を提案

 堤 智章(キーストーン・パートナース 代表取締役)
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東洋炭素に大量保有報告書を提出

―― キーストーン・パートナースは、2013年10月に東証1部上場の東洋炭素に関する大量保有報告書を提出致しました。プレスリリースによると、東洋炭素の株式340万942株(発行済み株式の16.39%)について、特定包括信託契約に基づく指図権委任契約書を締結し、議決権行使の指図権を持つことになったのです。議決権行使の目的は、東洋炭素の持続的な企業成長及び経営体制の強化に関して現経営陣をサポートすることであり、同社が持っている世界的な技術力や開発商品力をより多く他分野へ展開していくこと、あるいは業績の更なる伸長に向けて有力関係企業との業務提携などを視野においた多面的な経営戦略の推進に向けた提言等を行うことによって、同社の企業価値創造を図っていくことにあるとしています。

 株主の権利は配当など経済的利益を主とする「自益権」と、経営への参画を目的とする「共益権」に大別されるといわれていますが、堤さんたちが打ち出されたのは自益権を株主に残したまま、信託銀行の信託口を使って共益権だけを委託してもらうというストラクチャーということで注目されています。このストラクチャーを打ち出されたのにはどのような背景があったのですか。

「金融庁は14年2月に、大口投資家に積極的な議決権行使を促す行動規範である『日本版スチュワードシップ・コード』を定めました。これを見ても分かるように、株主としてどのように権利行使をしていくべきか、あるいは株主としてどういう対話を企業の経営陣と行っていくかということを考え直すことが求められている時代だと思います。我々は企業再生ファンドとしてこれまで多くの企業再生に携わってきました。経営上の問題を抱えた企業に対して、経営陣との建設的な対話を通して問題解決をしていくことが持続的な企業の成長、ひいては株式市場の活性化を促すことになります。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、企業再生ファンドとして日本経済の活性化をも視野に入れて考えたのが今回のストラクチャーで、潜脱行為を企図してこういうストラクチャーを考えたのではありません。実際、事前にこのストラクチャーについて行政当局へも確認を行った上で、その指導の下に取引を開始しております。

 キーストーン・パートナースを立ち上げたメンバーの多くは1980年代に銀行界に身を投じたのですが、90年代に入ると海外ではデリバティブ技術の発達を背景にして価格変動リスク、金利変動リスク、為替変動リスクなどに対応した金融新商品が開発されました。そうした目で株式の世界を見ますと、株式の売買に絡んだデリバティブ商品はあっても、株主の権利である自益権と共益権を分けて取引を行うという発想はなかったのです。我々が今回このようなストラクチャーを発想した背景には金融業界でデリバティブ商品を扱ってきた経験が影響しているのかもしれません」


 

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