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(2019/02/20)

第4次産業革命がもたらす異業種間提携の広がり

マール企業価値研究グループ
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  AI(人工知能)やIoTに代表される第4次産業革命の本格化に伴い、大手企業がかかわる異業種間の業務提携の動きが広がってきた。2019年に入ってからも、トヨタ自動車とパナソニックが電池事業を巡って提携を発表、また、大手通信、KDDIもネット証券大手であるカブドットコム証券への出資を検討していることが報道されている。前者については既に2017年、両社の提携検討について発表があったが、今回の提携発表によってより踏み込んだ関係強化へと動き出すことが明らかとなった。

  19年1月22日に発表された合意文書によると、トヨタ自動車とパナソニックは2020年末を目途に電気自動車(EV)に向けた車載用電池の新会社を発足させる。新会社はトヨタ、パナソニックがそれぞれ51%、49%出資、20年代前半からハイブリッド車(HV)の50倍の容量を持つとされているEV用電池の生産を本格化するという。これまでも両者は電池事業で協働していたが、共同の新会社設立を決断することで来るべき電気自動車社会に向けた覚悟の投資に踏み切ったといえる。

  トヨタ自動車にとっては2030年にHVを含む電気自動車販売目標550万台(20年にEV販売開始、30年にEVと燃料電池車だけで100万台以上生産)に向けて、核となる電池事業(角形リチウムイオンのみならず、より充電性能が高く航続距離を伸ばせる全固体型電池、さらには次世代電池の研究・開発など)の充実が急務であった。世界を見渡してもフォルクスワーゲンは25年までにはEVを20車種、生産台数100万台以上を目標に動いているし、ゼネラルモーターズも23年までにはEVを販売するとしている。環境規制の面でガソリン車やディーゼル車に対する風当たりが強まる中で、EVに対する評価は今後さらに高まっていくとみられる。EVと同時並行的に開発が進んでいる自動運転車の開発深化に向けて、パナソニックの持つ技術の取り込みが必要不可欠であったのだろう。特に、今後EVが大きく伸びると推測される中国市場で成長するには電池の安定調達は決定的に重要で、技術の蓄積があるパナソニック(車載用リチウムイオンのシェアでは世界第2位)と本格的に組むのは必然の流れだったと思われる。

  一方、パナソニックにとっても…


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