1 はじめに(背景・概要) 近年、市場環境の変化のスピードが加速しており、自社の経営資源だけで環境変化に迅速に対応することがますます困難になっている。また、少子高齢化・人口減少等に伴い、国内市場の世界市場に占めるシェアが低下する中、海外の成長市場の取り込みが不可欠である。こうした状況の中、
企業価値向上を目指す上では、過度な自前主義にとらわれず、海外のプレイヤーとの協業連携やオープンイノベーションを進め、海外活力の取り込みを図っていくことの重要性が高まっている。
協業連携として、高度な経営ノウハウ、海外ネットワーク等を有する海外事業会社や海外
PEファンドといった海外資本からの出資の受入れ(以下、「海外資本活用」という)も選択肢の1つであるところ、海外資本に対する日本企業の心理的ハードルの高さ等により、日本企業による海外資本活用は諸外国と比べて低水準となっている。また、海外資本による日本企業に対する投資案件の実現等により、日本企業における海外資本活用の認知度は高まってきた一方、海外資本活用の具体的な進め方や留意点等については、日本企業の間でまだ十分に浸透していないとの指摘もある。
そこで、経済産業省は、日本企業が企業価値向上に向けた選択肢の1つとして海外資本活用を検討することが可能となるよう、「
企業価値向上に向けた海外資本活用ガイドブック」を策定した。策定に当たっては、有識者による研究会の設置や企業へのヒアリングを行い、海外資本活用に関する研究を行った。
これらを踏まえ、ガイドブックには、
○海外資本活用の概要や有効性、留意点・リスクなど、海外資本活用を具体的に検討するに当たって備えておくべき「基礎知識」
○海外資本活用の有効性を高める上で日本企業の経営者層に期待される「5つの基本的行動」とその具体的な事例を合わせて掲載し、より実践的な内容としている。
本稿では、ガイドブックのポイントとなる部分を抜粋して解説することとし、具体的な事例を含む詳細な内容は、ガイドブックをご覧いただきたい。