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[【クロスボーダーM&A】ベトナム投資の基礎知識 [ベトナムマーケット概要](ワールディング)]

(2016/03/23)

ベトナムの小売業界

 谷口 正俊(株式会社ワールディング 代表取締役社長)

 今年に入り、これまでベトナム国内のスーパーマーケットやコンビニなどの近代的市場(MT:Modern Trade)をリードしてきた2つのハイパーマーケットブランド売却の報道があった。

 2002年に進出して19店舗の会員制卸売の形態をとったハイパーマーケットを展開する独Metroが、タイTCCに事業を売却することを発表した。Metroは2014年8月にBerli Jucker Public Company Limited(BJC)への売却を発表したが、2015年2月にBJCの主要株主のTCCが売却先となることが決定し、BJCがTCCの委託によりMetroを運営する形をとる。加えて、BJCは2018年までに205店のコンビニエンスストアB's Martを開店するため、3,126万ドルを投資するという。

 また、1998年から32店舗のハイパーマーケットBig Cと10店舗のコンビニエンスストアを展開する仏Casino Groupも売却を検討しており、日イオン、シンガポールDairy Farm、韓LOTTE、タイCentral、タイTCCが入札に参加しているといわれている。

 このように、ベトナムの小売市場において、外資企業・ローカル企業を交えた業界再編が進んでいる。

 世界貿易機構(WTO)加盟による2015年以降の100%外資での小売企業設立認可、およびアセアン経済共同体(AEC)発足による6億人の市場統合、そして環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)による域内連携の活発化といった要素がベトナムの小売市場にも大きな影響を及ぼすことになる。

 現在、ベトナムにおけるMTは25%しか占めておらず、伝統的市場(TT:Traditional Trade)が依然として最も身近な販売チャネルである。同じASEANだと、フィリピンのMTは33%、タイ34%、マレーシア60%、シンガポール90%である。政府は今後、MTを45%にまで引き上げる計画であり、外資系小売業者が注目している。独Metroや仏Casino Groupが西欧に経営資源を集中させるためにベトナムから撤退したこと伴い、アジアの小売大手の参入がいっそう進むことが予想される。

 日本のイオングループのベトナム進出も目立っている。2011年末から現地に出店をしている傘下のコンビニエンスストアMini Stopがホーチミン市を中心に向こう10年で800店以上に拡大する方針を打ち出したのに加え、2016年夏にベトナム4号店となるイオンモールを南部にオープンさせる。さらに、昨年1月にはハノイに20店舗を展開するFivimartに30%、ホーチミン市中心に27店舗を展開するCitimartに49%の資本参加をすることを発表した。同社はベトナムをマレーシアに次ぐアジア市場の中心国と位置付け、2社と協力することで、早期にベトナムでの店舗数200店舗、売上高1,000億円、利益率3%を目指すとしている。

 日本の小売大手セブン&アイ・ホールディングスグループもベトナムへ進出する。2015年7月に、同グループの米国子会社7- Eleven Inc.がベトナムでピザハットのチェーン展開をおこなうIFB Vietnamと契約を締結したことが発表された。今後3年間で100店、10年以内に1000店の出店が計画されている。

 他には、現在ベトナムに113店を擁するコンビニエンスストア米サークルKが、この1年で150店まで拡大させる予定である。

 外資企業だけでなく、現地企業の小売市場への参入も注目されている。不動産ディベロッパーのVingroupは、これまで小売部門において立て続けにM&A取引を行ってきた。2014年にOcean Martを買収後Vinmartと改名して30店オープンし、VinatexからVinatextmartsの全株式を取得して39店舗のVinatextmartsも傘下に収めた。

 Vingroupは新規オープンやM&Aにより、今後2017年までに100店舗のスーパーマーケットと、1000のコンビニエンスストアを開業する予定としている。

 外資小売企業のベトナム進出や国内大手企業の小売市場参入が重なり、競争がさらに厳しくなるとともに、TTからMTへの消費の転換がよりスピーディーに進むことが予測される。

【主なベトナムスーパーマーケット/コンビニエンスストア】



株式会社ワールディング

株式会社ワールディング
TEL:03-5361-6455

■筆者プロフィール
谷口正俊(たにぐち まさとし)
1973年イタリア・ローマ生まれ。
早稲田大学商学部卒業後、(株)ベネッセコーポレーション入社。
同社退社後、2000年7月「教育を通じてより良い世の中へ」と、教育関連企業(株)ウィル・シードを共同創業、代表取締役副社長就任。大手企業400社の人財育成支援及び、全国の小中学校に新しいタイプの体感型教育プログラムを提供。
同社副社長を退任後、2006年6月、(株)アクティブリッジの設立に参加。
7年に亘るベトナム事業展開の後、2013年3月、(株)ワールディングを設立。
日系企業のベトナム進出支援、ベトナム人材採用・育成事業を展開中。
日本とベトナムを往復する日々を送っている。


 

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