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[【クロスボーダーM&A】ベトナム投資の基礎知識 [ベトナムマーケット概要](ワールディング)]

(2016/08/24)

ベトナムの繊維業界②

 谷口 正俊(株式会社ワールディング 代表取締役社長)

 ベトナム統計局によると、2016年1~6月のベトナムの繊維製品輸出は前年同期比6.1%増の86.0億ドルとなった。一方、同期間の主要繊維品の輸入は、綿花は同0.4%減の7.0億ドル、糸類は同1.4%減の6.1億ドルとともに減少したが、織物類は同4.1%増の42.3億ドルとなった。ベトナム繊維協会(VITAS)によれば、同期間の伸び幅6.1%は、ベトナムの輸出価格の上昇に伴い、米国やEUなどの主要輸入国が、特恵関税制度が享受できるラオス、カンボジア、ミャンマーへの発注を増加させていることが要因となり、目標を下回ったという。

 ベトナムの繊維関連企業は、2004年の1,951社から、2014年には5,218社へ、10年間でおよそ2.7倍に増加している。所在地域の構成としては、2004年では南部の比率が約70%と圧倒的に高かったが、2009年には南部の比率は約60%と下がり北部・中部の比率が増加している。現在では、ベトナムにおける繊維関連企業の分布は、北部32%、中部8%、南部60%となっている。

 ベトナムの繊維業における輸出入先は、中国、EU諸国、米国、日本が多い。特に、綿花の輸入先は米国が、人造長繊維の原糸及び生地の輸入先は日本が大幅な増加傾向にある。ベトナムからの輸出を見ても、絹織物に関しては日本、ローエンド製品(メンズ、レディース、アンダーウェア、乳児用衣類、カジュアル)はアメリカへの輸出が非常に多く、TPPによって、それぞれの輸入量・輸出量が更に拡大する可能性も高いといえる。ただし、綿・植物性繊維・人造短繊維の織物分野では韓国への輸出が極めて多い。韓国系企業が織物段階の生産委託まで踏み込んでベトナム拠点を活用していることが見受けられる。

 ベトナムに進出している日系企業の特徴としては、縫製工場を現地法人化し労働集約的な縫製の製造工程のみを行っている企業や、縫製委託のみを行い国内販売を目的とした商社などが多い。

 従来、ベトナムに展開する縫製事業者の多くは、原材料の大部分を中国・台湾から輸入してきたが、繊維及び繊維製品の原産地規則は①紡ぐ、②織る、③縫製、という3工程を原則TPP締約国内で行わなければならないヤーン・フォワード・ルールにより、優遇関税を享受するためには、今後原材料の調達先をベトナム国内及びTPP域内へ変更する必要が出てきた。また、数年内にEU‐越間FTAの発効が見込まれており、TPP発効による米国市場への輸出拡大と同時に、対EU輸出拡大を企図する事業者も増加している。さらに、従来OEMを主体に事業展開してきたベトナムの縫製事業者の中にも、ODM(Original Design Manufacturing)、OBM(Original Brand Manufacturing)への移行に着手する事業者が少なからず存在し、彼らは米国・EU市場のミドル・ハイエンドをターゲットとした製品開発に向けた取組みを進めている。一方、日系企業においては、日本の高付加価値生地のベトナムにおける供給、ハイエンド製品の開発に際する企画・デザインにおける技術提携、海外市場拡大に際する商社等のディストリビューターによる販路提供等が今後のビジネス拡大に向けた課題として挙げられている。日系企業にとって、TPP発効を踏まえた、ベトナムの生産・販売拠点としての活用は大きなビジネスチャンスとなると考えられる。

株式会社ワールディング

株式会社ワールディング
TEL:03-5361-6455

■筆者プロフィール
谷口正俊(たにぐち まさとし)
1973年イタリア・ローマ生まれ。
早稲田大学商学部卒業後、(株)ベネッセコーポレーション入社。
同社退社後、2000年7月「教育を通じてより良い世の中へ」と、教育関連企業(株)ウィル・シードを共同創業、代表取締役副社長就任。大手企業400社の人財育成支援及び、全国の小中学校に新しいタイプの体感型教育プログラムを提供。
同社副社長を退任後、2006年6月、(株)アクティブリッジの設立に参加。
7年に亘るベトナム事業展開の後、2013年3月、(株)ワールディングを設立。
日系企業のベトナム進出支援、ベトナム人材採用・育成事業を展開中。
日本とベトナムを往復する日々を送っている。


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