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(2019/12/05)

地銀本格再編の台風の目となるか:SBIホールディングスの構想

マール企業価値研究グループ
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 19年9月から11月にかけてネット金融大手のSBIホールディングス(以下、SBI)は立て続けに、島根銀行(9月6日)、福島銀行(11月11日)との資本業務提携を発表した。ネット金融業を突き進むSBIだけに、ビジネスモデルの異なるこれら地域金融機関との資本提携は驚きを持って伝えられた。SBIの出資比率は前者が約34%で後者が約19%、いずれも出資比率は50%を下回り、持ち分法適用会社とはしない方針である。しかし、双方の幅広い業務において協働を探るとしており、今後のビジネス展開への注目が高まりそうだ。

 提携の内容は大まかに、(1)SBIは両地銀の顧客に同社の金融商品やサービスを幅広く提供し、(2)SBIのアセットマネジメントに関するノウハウやネットワークを活用することで地銀サイドの運用力を強化、(3)地銀の運用資産の受託を通じた収益力の強化、(4)フィンテックなどを活用した両地銀の顧客利便性向上や営業コスト削減、といった具合にまとめられる。18年から業務提携を行っていた福島銀行とは共同店舗の設立も発表しており、株式等のリスク資産導入も図るとされている。

 これまで地銀の再編は、福岡ファイナンシャルグループの発足にみられるような大手有力地銀を中心としたグループづくり、先にみられたような横浜銀行と千葉銀行の業務提携のような大手同士の再編、といったかたちが主であった。しかし、今回のケースは顧客基盤が相当異なる、いわば、“異業種”の提携といった点で目新しい。長期化する超低金利や地方中心に進む高齢化といった環境下で、もはや規模の大小にかかわらず、同じ地銀同士の提携や統合ではシナジー効果も非常に限定的であるとの認識が広がりつつあると思われる。実際、報道によれば地銀を取り巻く経営環境はすこぶる厳しい。19年4~9月の連結決算では、支援している中小企業の経営不振で不良債権の処理費用が前年比で大幅増加、上場地銀の7割に相当する56行が最終減益か赤字となった。今後も低金利環境が続く中で、本業での稼ぐ力の復活はなかなか望みにくく、同業で再編を進めたとしても共倒れとなる可能性が高い。

 今回の資本業務提携は、地銀の経..


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