[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2022年11月号 337号

(2022/09/29)

製糖業史上最大のM&Aを実施したDM三井製糖HDの狙い

――「食」の変化に対応し、積極果断に事業の構成を見直す

  • A,B,EXコース
※本記事は、M&A専門誌マール 2022年11月号 通巻337号(2022/10/17発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。 
森本氏

森本 卓(もりもと・たく) DM三井製糖ホールディングス 代表取締役社長

1981年早稲田大学商学部卒、三井物産入社。1996年米国ハーバード・ビジネス・スクール・エグゼクティブ・コース修了。2002年米国公認会計士(CPA)試験合格。2005年米国三井物産株式会社米州本部Senior Vice President、2013年三井物産執行役員化学品業務部長、2016年常務執行役員パフォーマンスマテリアルズ本部長、2017年専務執行役員アジア・大洋州本部長アジア・大洋州三井物産社長、2019年4月同社副社長執行役員アジア・大洋州本部長を経て、2020年5月からDM三井製糖ホールディングスの前身である(旧)三井製糖顧問、2020年6月代表取締役副社長を経て2020年11月より代表取締役社長CEO。2021年4月のDM三井製糖ホールディングス発足に伴い、代表取締役社長CEO(現任)。

 国内製糖メーカー最大手のDM三井製糖ホールディングス(HD)が発足して約1年半が経過した。DM三井製糖HDは、三井物産系で製糖業界首位の三井製糖と、三菱商事系の同2位である大日本明治製糖が経営統合して2021年4月に発足した持株会社だ。現在、国内製糖業で4割程度の市場シェアを有する。

 2社の経営統合前の2020年3月期の売上高(単体ベース)は三井製糖が1138億円、大日本明治製糖が同339億円で企業規模に開きがあるほか、前者は東証プライム上場、後者は非上場企業だった。しかし、経営統合は上場企業として必要な会計システムなどに関しては三井製糖に大日本明治製糖のシステムを統合させる一方、コーポレート業務の一部は大日本明治製糖の手法を採用するなど、効率性や最適化を尊重する2社の「いいところ取り」の考え方に基づき進めている。

 国内製糖業界は、新型コロナウイルスの影響等を受けた外食・お土産需要の低迷を背景に、国内砂糖消費量が2020年3月期の181万トンから2022年3月期に171万トンにまで減ったほか、円安・原油価格上昇などを背景とした生産コストの上昇も影響し、厳しい経営環境となっている。

 また、日本の精糖メーカーには、海外から買い入れる粗糖価格に対して日本国内の砂糖農家を守るための保護的な政策が取られていること等も、経営に影響を与えている。従来からのコスト削減等の企業努力に加え、従来の延長線上にない事業展開が求められてきた業界と言える。今後は、国内経営基盤の効率化と同時に、海外や成長分野への投資やM&Aを積極展開することにより、事業基盤の安定化を図る。

 M&Aの対象の核心となるのが、消費者の健康を意識しつつ素材から食品事業を含むサービス分野までを総合的に消費者に提供する新規事業である「ライフ・エナジー事業」(LE事業)だ。2022年9月7日には、三井製糖とその子会社ニュートリーは、医療機器大手のテルモから栄養食品・関連製品の事業を譲受することを発表した。今後もこのような新しい分野において、積極的に企業買収や資本業務提携を検討していく。

 三井製糖とDM三井製糖HDの社長を兼務し、経営統合の陣頭指揮を取っている森本卓氏に、現在実施中のPMIや今後の業界再編、新規事業展開などについての取り組み方針を聞いた。
砂糖業界の発展・歩みと総合商社とのつながり

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