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(2020/06/24)

「自信」が『確信』に変わるM&A成功の鍵 〜ビジネスDD実施の重要性と活用方法〜

楜澤 悟(ユナイテッドベンチャーズ株式会社 代表取締役社長)、西平 太智朗(同社 プロジェクト戦略室長)
左から西平 太智朗氏楜澤 悟氏、岩口 敏史氏

   近年のM&A件数の増加に比例して、中堅規模の事業会社にもM&Aを経験する企業が増えている。一方で、M&A実施後に、対象会社や事業計画についての分析・実態把握が不足していたことを痛感するM&A担当者も決して少なくない。今回は、ビジネス・デューデリジェンス(以下「ビジネスDD」)で豊富な実績を有するユナイテッドベンチャーズ株式会社の楜澤(くるみさわ)悟代表取締役社長と西平太智朗氏にM&AにおけるビジネスDDの役割や活用方法、ビジネスDDを行う際の上手な専門家の活用などについて、レコフデータ取締役会長の岩口が話を伺った。


■ 経営支援の経験をベースに、ビジネスDDの分野へ事業を拡大

岩口 本日はよろしくお願いいたします。まずは社長から自己紹介と現在までの事業の変遷についてお聞かせください。

楜澤 私はベイン・アンド・カンパニーを経て、1996年から足掛け10年ソフトバンクグループにおりました。ソフトバンクでは新規事業の立上げやその後の運営に携わることが多く、有名なところだとヤフーBBなども初期メンバーとして携わり、孫社長のもとで事業計画の立案を担当していました。

 その間ゼロから立ち上げたグループ子会社をCOOとしてIPOする経験などもして、そろそろ別の道をと考えたときに、創業して一定のレベルまで来たベンチャー企業がもう一歩上を目指すことに関わる仕事をしたいと考え、2007年にユナイテッドベンチャーズを設立しました。

 最初に手がけたのが経営支援型の投資ファンドの立上げです。私自身が実際ハンズオンで経営していたようなサイズ感の上場企業で、将来の伸びしろがあるものの、少し足踏みをしているようなところに投資をして、経営企画のスタッフ、あるいは取締役として中に入って一緒にバリューアップを目指すというモデルのファンドでした。運用額は5億円程度でしたが、約5年の運営期間で倍以上のリターンを得てIRRは約19%の結果となりましたが、ファンドは運営期間の終了時に一旦クローズしました。

岩口 ファンド運営を一旦終えて、次にビジネスDDという分野にフォーカスされていったのはどういうプロセスだったのですか。

(図表)事業の変遷


楜澤
 投資先からエグジットしたあとも引き続き手伝ってほしいと言われ、当社のメンバーが半常駐で入っていたのですが、経営支援を進める中で経営企画室スタッフとしてM&Aに関わることがありました。その後もM&A案件がきた時には、定常業務とは別に当社から追加でリソースを提供し、ビジネスDDを担当するということを何度か経験するようになりました。

 経験を重ねるうちに、買い手企業が社内メンバーだけでDDを行うことの課題と限界や、経験値の高い外部のプロフェッショナルがサポートすることで案件の検討がスムーズに進むこと、またその後のPMIにも携わり、M&Aの実行前にどこを精査しておくと実行後に役立つかというビフォーアフターも含め、全体プロセスに一通り関与する経験を積めたことが、きっかけとして大きかったです。


■ 事業会社の経営企画部門出身メンバーだから肌感覚で顧客を理解できる

岩口
 御社の現在の事業内容についてお聞かせいただけますか。

楜澤 現在の我々の事業は2本立てで、1つが業務委託契約により、顧客企業に半常駐的に当社メンバーが入って経営企画室や社長室の担当業務領域を実務ベースでサポートする、経営企画室支援サービスです。期間は数カ月から長いときは数年にわたりお付き合いすることもあります。一方、ビジネスDDサービスは案件ベースが基本ですが、常駐先のお客様からの依頼を受けてそのサポートを追加で請け負うことや、あるいは、最初にビジネスDDでご縁ができて、買収後に社内スタッフに限りがあるので引き続き面倒を見てもらいたいということで、PMIのサポートを行うようになるケースもあります。両事業は親和性が高く、シナジーがあるので、バランスを見ながら行っています。

岩口 御社のメンバーはどういうバックグランドをお持ちでしょうか。

楜澤 当社は事業会社で経営企画部門を経験したメンバーが中心です。採用に際しても、コンサル業界よりも事業会社での経験を重視しています。

岩口 メンバーに事業会社の経営企画出身の方が主流な理由は何ですか。

楜澤 そこがうちの特色であり強みになります。実際、事業会社の経営や、あるいは上場企業の経営企画などを経験すると、当然M&Aを実施していく立場、あるいはPMIを実施する立場という経験も積んでいるわけです。そのためクライアントから案件の相談がきたときに、その背景を的確に理解できますし、我々が作成するレポートがクライアントの社内で何のためにどのように使われるかも、肌感覚で分かるわけです。

 よくある話ですが、『M&Aをやるぞ』と社長は言っているけど、やれと言われたCFOは『この案件はまずいのではないか』と思っていて、周りの社員たちも心配している。でも社長がやれと言っているので押し切られて実行してしまうんですが、フタを開けてみるとみんなが心配した通りだったりする。そのときに、『話が違うじゃないか!ちゃんと調べたのか!』と同じ社長が怒るわけです(笑)。そんな経験をした方々に、次に案件がきたときには同じ轍を踏まぬよう、我々を頼っていただければと思っています。

岩口 なるほど。実際はビジネスDDのアウトプットは書かれたレポートですけど、それ以前の背景からオーナーの意向、その会社のキャパシティといったことをよく理解できているから、実際に案件を行うにしても、どういう形でやるのが最もリスクが少ないかを見通してビジネスDDの中で顧客に助言できる、ということですね。

楜澤 まさにそうです。表面だけを見てレポートを作っても、本当にそれが期待されたアウトプット、期待していた使われ方をするとは限らないのです。やはり背景も含めたところを理解しながらコミュニケーションを進めていくことで、結果的に満足度が上がると思っています。

■ 経営者のかゆいところに手が届く、わかりやすさを追求したビジネスDDレポートを提供

岩口 レポートの報告内容について教えていただけますか。

西平 プロジェクトの期間としては4週間から6週間ぐらいが標準的です。内容は、基本的には3つに分けられます。1つは対象会社から必要な資料を頂いてその中身を分析して取りまとめていく、これが1つの大きな柱です。2つ目の柱が、対象会社の周辺情報、例えば、市場であったり、顧客や競合などについて調査分析を行って報告していく。3つ目はマネジメントインタビューです。ここが実は結構重要になります。例えば社長に聞いている話と各部門の現場の責任者に聞いている話とでは視点が当然違いますし、また事実の解釈が違ったりということも出てきます。秘匿性の問題があるので、そこは対象会社と相談しながら進めますが、ここでキーパーソン一人一人とのインタビューをきちんと行います。これら3つが標準的な業務内容になります。

岩口 御社にビジネスDDを手伝ってもらうと、どのようなメリットがあるのでしょうか。

楜澤 いくつかありますが、限られた時間の中で事業全般についての必要な情報や課題など、あらかじめ理解しておくべきことをわかりやすく取りまとめてお伝えすることができるというのが一つです。作業量としては、ある程度膨大な量になることもありますが、そこの取捨選択や整理の仕方について、我々は経験を積んでいます。買い手企業の経営者にとって『あそこはどうなっているんだ、ここはちゃんと見ているのか』と気になるような点について、かゆいところに手が届いて、きちんとつまびらかに把握することができる。それが適切な判断につながっていきます。

 2つ目は、買い手からすると、当然リスク要因を事前に把握したいので、会計や法務のDDもそのために行いますが、例えばビジネスDDでは、対象会社側が作っている事業計画に基づいて示される事業価値評価の妥当性は、その事業計画のベースとなるアサンプションが本当に適切かどうか、一つ一つ確認しないと見えてきません。これが見えてくると、例えばその事業計画上の売り上げがこう成長するから評価額10億円と言っていた話が、実は10億円ではなくて5億円が妥当になるかもしれないのです。我々は価格交渉を目的に分析を行うわけではないですが、買い手側の会社が売り手との交渉の中で指摘して、フェアバリューで話をきちんと着地させるための一つの材料としていただくということもあります。


■ビジネスDDの標準価格は150万円、業界内でリーズナブルな価格を提供

岩口 M&Aの現場にいると、売り手さんのガードが結構堅くて、DDで絶対に余計なものは見せないと、ファイティングポーズを取ってくることも多いと思うんですが、そこをどううまく入り込んでいくのでしょうか。

楜澤 見せられないことが何かある場合、それも含めて一つの重要なインフォメーションだと思いますし、そういう意味では投げかけてどこまで返ってくるのかということも結構重要であったりします。また、FAが非開示といった情報について、実際に社長やCFOに伺ってみると『これは別に隠す話でもなんでもない』とおっしゃることがあります。そういったことがあるので、我々は基本メニューとしてインタビューを入れさせてもらっています。

岩口 なぜガードが堅いのかというところも経験豊富なプロフェッショナルだと仮説を立てられるでしょうし、そこについての交渉戦術もあるので、こういったところが目に見えない付加価値として結構大きいかもしれませんね。

西平 そうですね。売上高が数十億円規模の中堅企業の場合、やはりビジネスDD時の依頼資料が適切に出てこないことやそもそも存在していないケースは往々にしてありますが、そこはインタビューなどで補完してまとめていきます。それから付加価値についてですが、第三者視点ということがあると思っています。事業会社での経験に照らし、社内の人間だと案件の背景や対象会社から提出された資料などに対してバイアスがあったり、事業計画の妥当性についてはなかなか真っ正直に書けなかったりということがあるかと思います。我々はニュートラルな第三者の立場でレポートを作成し、かつ、M&A後のことも含めてまとめることにより、クライアント企業様の迅速なアクションに繋げるところが価値だと考えています。



岩口
 確かにバイアスもあるし、経営企画のM&A担当者だったら、明日の取締役会を淀みなくやり過ごすことが目の前の目標になりがちですが、そこを第三者の目で重要であれば逃げないで論点化していく。そういうところは、プロフェッショナルたる所以という感じがします。大体、ビジネスDDのコストはどのくらいなのでしょうか。

西平 先ほど申し上げた標準的な業務内容で一通りやらせていただくと150万円前後からになります。事業計画への関与やPMIのシナリオ策定といった内容も追加となると、オプショナルサービスとして追加費用を御願いしております。業務内容の範囲・費用・スケジュールについては、クライアント企業様のニーズや状況に応じて、臨機応変に対応しております。

岩口 大手のコンサルティング事務所と比較すると、かなりリーズナブルな印象があります。

楜澤 ありがとうございます。我々もそう思っています(笑)。

岩口 中堅どころのビジネスDDサポートに競合はいますか。

楜澤 同じぐらいの金額レンジで我々が意識している競合はいないですね。おそらく、いつも使っているコンサル会社へついでに頼むという会社も多いと思いますが、ビジネスDDは固有のノウハウや相手方情報の取り方などがあるので、一般的な経営コンサルとはまた違ったスキルが重要なことをご理解いただければと思います。

■ 会社は「人」が構成している、DDでは人や組織の面も注意深くチェック

岩口 ビジネスDDを御社にお願いした結果、実はこんなことが分かった、もしくはこんなソリューションができたという具体的なストーリーをご紹介いただけますか。

西平 対象会社がIoT/AIといった先端的な技術にチャレンジしているSIerで、IT業界で全般的に言われているエンジニア不足を背景として、対象会社の技術やエンジニアのリソースを取り込んで自社の開発力をアップしたい、という案件がありました。対象会社にヒヤリングした際に、ITエンジニアのスキルがまとまった資料が存在しなかったので、履歴書のような書類や情報を一切合切くださいとお願いし、ITスキルや経験を報告書に可視化したうえで買い手企業に報告したところ、IoT/AIを手掛けている割には関連するプログラミング言語を書ける人や経験・スキルを持つエンジニアが想定よりも少ないということが分かって、それを材料にその後の価格交渉を行ったケースがありました。

岩口 社風が合う、合わないといった部分について、ビジネスDDの側面からコメントすることはあるのでしょうか。

楜澤 社内文化的なところまでは定性的、定量的にきちんとご説明するのは難しいですが、人のところはよく見るようにしています。ここは法務はもちろん財務、会計のDDでもあまり見えてこないところだと思います。例えば過去にさかのぼってその組織がどう変わってきたか、あるいは組織別の人員数がどう推移してきたか。あともう1つ重要なのは、役員の異動です。それぞれの異動には多くの場合何かしら経営上の理由があるわけです。そもそも会社は『人』が構成しているので、構成員たる社員なり役員の人たちがどういう推移や経緯をもってここまで来ているのかを丹念に追っていくと、結構見えてくることがあります。ですがこの点を軽視したまま進めてしまい、結果として買収後に想定外の事態となるようなケースが多いように見受けられます。

岩口 買い手としては、それを知ったうえで、Day1の資料になるということですね。

楜澤 まさにそういうことです。

岩口 得意な業界はありますか。

楜澤 IT業界出身の社員が多いので、結果的にITやメディアといった業種の実績が多くなっていますが、最近では製造業の案件も増えてきています。この業界だから出来る、出来ないということはなく、ある業界でM&Aが頻繁に行われるようになれば、手がける案件もそちらの業界が中心になってきますので、そういう意味ではマーケット次第と言えるかもしれません。

■ ビジネスDDのマーケットが広がることが、M&Aの成功率向上につながる

岩口 最後に、御社のビジネスを今後どのように展開されたいとお考えですか。



楜澤 我々はビジネスDDのマーケットがもっと広がっていくことが大事だと思っています。上場企業だとM&Aを検討する際に法務DD、会計DDについては通常実施していますが、それらに加えてビジネスDDも3本目の柱として当然行うべきプロセスである、ということをM&Aに取り組む企業にきちんと認知してもらうというのが一番重要と考えており、そこに向けていろいろな活動を継続していきたいと思っています。

 なぜかというと、一言でいえばそれが買い手企業のためになるからです。検討時もそうですが、むしろ買収後を考えたときに、ビジネスDDを通じて会社と事業の内容をあらかじめきちんと見ておくことがM&Aの成功のためにとても重要だということです。

岩口 M&Aは成約が成功ではなくて、M&Aを通じて何を成し遂げたかったのかが買い手にとっては重要で、それを成し遂げるに当たって、ビジネスDDからPMIへというプロセスは非常に重要であるということは、徐々に浸透してきていると感じます。

楜澤 一つ一つのM&Aを見ると単発の案件に見えますが、企業からするとそれは会社の持続的成長のための施策であり、買収後にグループの一員として事業が着実に成長することが本当の意味での成功となります。我々はそこを単発で見るのではなく、成長のプロセスを一緒に伴走してやらせていただく。そこが特徴だと思っています。

岩口 おっしゃる通り、M&Aで成功する企業は単発の大きなM&Aではないですね。よく日本電産の永守会長が『M&Aとは石垣を埋めていくようなものだ。一つ一つの石を埋めていき、それで城を作るのがM&Aだ』とおっしゃっています。楜澤さんのお話も相通じるところだと思います。本日はありがとうございました。


くるみさわ・さとる

1971年生まれ 東京工業大学工学部卒業
ベイン・アンド・カンパニーを経て1996年ソフトバンク株式会社入社。現スカパー!の立上げに従事したのち、子会社のクラビット株式会社(現 ブロードメディア株式会社)取締役に就任。スカパー!の拡販や、日本初の有線役務利用放送「BBTV」の立上げをCOOとして推進し、2002年にIPO。ヤフーBB等のグループ内各種新規事業にも携わる。
2007年ユナイテッドベンチャーズ株式会社設立、代表取締役就任(現任)。IT系新興上場企業を対象とした経営支援型投資ファンドの運営や茨城県にて地方新聞社の事業再生等を行う。
2019年東京都アドバイザー(デジタルトランスフォーメーションフェロー)に就任

にしひら・たいちろう

1979年生まれ 早稲田大学大学院 国際経営学専攻修了(経営管理修士)
テクノプロ・ホールディングス株式会社、パイプドHD株式会社、横浜ゴム株式会社等の経営企画、事業企画部門に従事し、事業と企画系の各種プロジェクト(M&A、組織再編、資金調達、海外工場立ち上げ等)に携わる。
直近は、データ解析企業である株式会社FRONTEOにおいて、人工知能(AI)の事業企画に従事し、コミュニケーションロボット事業立ち上げ、特許庁・経済産業省の実証実験、販売パートナー開発等に従事。
2019年ユナイテッドベンチャーズ株式会社入社





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<お問い合わせ先>
email:info@unitedventures.jp
TEL:03-3527-1395(担当:西平)


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