[視点]

2024年8月号 358号

(2024/07/09)

クロスボーダーM&Aは日本企業に何をもたらしたのか

齋藤 卓爾(慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授)
  • A,B,EXコース
 この15年、日本企業は多くの海外の企業を買収してきた。これらのいわゆるクロスボーダーM&Aは日本企業に何をもたらしたのだろうか。海外での販路、人材、新たな技術などの獲得を通じて、海外での事業基盤拡大に貢献したのは間違いないが、クロスボーダーM&Aは日本企業の経営力向上にも寄与したのではないだろうか。

 近年、活躍している経営者にはクロスボーダーM&Aの経験者が少なくない。米RJRナビスコの米国外事業の買収など一連の大型買収に関わってきたJTの寺畠正道社長、インディード買収を主導し、HRテクノロジー事業を飛躍的に成長させたリクルートホールディングスの出木場久征社長、欧州事業の現地トップ、海外事業統括としてSABミラーの欧州事業買収などの大型M&Aに取り組んだアサヒグループホールディングスの勝木敦志社長、インドのランバクシーの買収ならびに売却に関わった第一三共の奥沢宏幸社長などである。

 このような傾向は社長のキャリア調査からも確認できる。ここでは齋藤・澤(2023)(注1)の調査結果を紹介したい。


■筆者プロフィール■

齋藤 卓爾(さいとう・たくじ)齋藤 卓爾(さいとう・たくじ)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
2000年 一橋大学経済学部卒業、2001年 同大学大学院経済学研究科修士課程、2004年 博士課程修了 博士(経済学)、2004年 日本学術振興会特別研究員(PD)、2007年 京都産業大学経済学部講師、2009年 同大学経済学部准教授、2012年 慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授、2023年 同大学大学院経営管理研究科教授
専攻分野:コーポレート・ファイナンス、コーポレートガバナンス、企業経済学
授業・教育:財務管理、企業価値評価、M&A、コーポレートガバナンス
研究:取締役会、経営者のインセンティブ、ファミリービジネス、M&Aに関する実証研究

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