[Webマール]

(2024/06/20)

公正取引委員会の企業結合審査~疑問にお答えします~

菅久 修一(ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業) シニアコンサルタント、元公正取引委員会事務総長)
  • A,B,EXコース
 会社の経営支配権の変化・変動をもたらすものであるM&Aは、経営者や株主にとって重大な出来事であるとともに、その過程では、さまざまな作業や手続を要し、関係する法律も多数に上る。

 例えば、会社法をはじめ、法人税法などの各種税法、労働契約法、労働契約承継法などの雇用関係の各種法律、金融商品取引法、許認可に関係する各種法令などが関係するが、さらに、M&Aの当事会社の売上高規模等によっては、独占禁止法に基づく公正取引委員会による「企業結合審査」の手続も必要となる(株式取得、合併、分割、共同株式移転、事業の譲受けなどを独占禁止法界隈では「企業結合」と呼んでいる)。

 この公正取引委員会の企業結合審査に対しては、さまざまな指摘(批判?)がある。例えば、

(1) 企業結合によって市場シェアが高まることを公正取引委員会は常に警戒していて、すべて厳しく審査するので、実際には問題ないとの結論になるものであっても、公正取引委員会の結論が出るまでには時間がかかる。このため、当初予定していたクロージングの延期をしばしば余儀なくされるなど当事会社にとって大きな負担になっているのでは?

(2) 公正取引委員会は、日本国内の市場シェアにこだわった審査をしていて、国際市場とか、有力な外国企業に対抗する必要性といった観点に欠けているのでは?




■ 筆者履歴

菅久 修一(すがひさ・しゅういち)

菅久 修一(すがひさ・しゅういち)
1983年東京大学経済学部卒業、公正取引委員会事務局入局。在ベルリン日本国総領事館領事、審査局管理企画課長、官房総務課長、消費者庁審議官、公正取引委員会事務総局取引部長、経済取引局長等を経て、2020年事務総長。2022年よりベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)シニアコンサルタント。現在、早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師を務める。 著書:『独占禁止法〔第5版〕』(編著)(商事法務、2024)、『はじめて学ぶ独占禁止法〔第4版〕』(編著)(商事法務、2024)、『独禁法の授業をはじめます』(商事法務、2021)ほか。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

関連記事

バックナンバー

おすすめ記事