※本記事は、M&A専門誌マール 2025年9月号 通巻371号(2025/8/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。
2025年4月時点で東京証券取引所に上場する企業のうち、3月決算企業はプライム、スタンダード及びグロースの各市場をあわせて2242社であった(東京証券取引所上場部作成に係る「2025年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」(2025年4月25日)に基づく)。その中で株主提案権の行使がなされた上場企業は、最終的に行使が撤回された事案も含めて100社を超えるとの報道がなされた。これは3月決算企業の約5%に相当し、過去最多の数とのことであった。提案内容は、(1)大規模な株主還元や資本効率の改善という観点からの施策を求めるもの、(2)買収防衛策廃止を求めるもの、(3)業績悪化やコンプライアンス問題への経営陣の対応姿勢を問い、経営陣刷新を求めるもの、(4)ノンコア事業の売却を含めた事業再構築を求めるもの、(5)ESG対応といった国際的な動きへの対応を求めるもの等、様々な事項に拡がっている。
かつては、総会に向けた議事進行シナリオや想定問答の準備、そして、リハーサルを徹底して行いつつも、総会当日は株主からの質問がほとんどなく、当たり前のように穏やかに終了する総会も少なくなかった。準備に多くの時間を割いた担当者は安堵する一方で、「シャンシャン」という言葉に触れて、備えの意義に疑問を感じることすらあったかもしれない。初めて総会支援に関与した若手弁護士からは、総会終了後に、「拍子抜け」という忌憚のない感想が吐露されたこともあった。
■筆者プロフィール■

髙原 達広(たかはら・たつひろ)
TMI総合法律事務所 パートナー弁護士
1996年に弁護士登録し、TMI総合法律事務所入所。1997年より米国に留学し、1998年にGeorgetown UniversityにてLLMを修了。Simpson Thacher & Bartlett(New York 1998~1999)、Wilson Sonsini Goodrich & Rosati(Palo Alto 1999~2001)での執務経験を経た後、2001年にTMI総合法律事務所に復帰し、2003年にパートナーに就任。
2010年より中央大学法科大学院にて兼任講師として講義を担当し、2021年より同大学院客員教授(現任)。
事業会社における経営統合・M&A、PEファンドによる買収案件に多数関与し、株主総会支援、アクティビスト対応、支配権・経営権争い等についても幅広く対応している。