カナダのアリマンタシォン・クシュタール(ACT)によるセブン&アイ・ホールディングス(HD)への買収提案のゆくえに関心が集まっている。5兆5000億円規模と伝わる買収提示額に対し、セブン&アイ側は9月6日に書簡で
企業価値に対する評価が「『著しく』過小評価している」などと回答した。クシュタールの次の一手はより現実的な提案となりそうだ。
「買収に賛同せず」は想定内
セブン&アイの株価は図表1に示すように、クシュタールから買収提案を受けていたことが明らかになる直前の8月16日には1761円だった。その後、9月3日には2221円まで上昇する場面があったが、セブン&アイが9月6日に送付した書簡で、提示価格が14.86米ドルだったことが明らかになったため、同日終値はその円換算価格に近い2133円まで下落した。
セブン&アイのドル建て価格の買収提案以前のピークは3月7日に記録した14.90ドル前後だった。クシュタールはこの価格が受け入れられないことは重々承知していただろう。とりあえず買収を提案し、セブン&アイの経営陣の反応や、日本社会が日本の大企業の買収計画をどう受け止めるかを確認したかったに違いない。
クシュタールに宛てた書簡でセブン&アイ側は買収価格への不満のほかに2点を指摘している。
■ 筆者履歴
前田 昌孝(まえだ・まさたか)
1957年生まれ。79年東京大学教養学部教養学科卒、日本経済新聞社入社。産業部、神戸支社を経て84年に証券部に配属。97年から証券市場を担当する編集委員。この間、米国ワシントン支局記者(91~94年)、日本経済研究センター主任研究員(2010~13年)なども務めた。日経編集委員時代には日経電子版のコラム「マーケット反射鏡」を毎週執筆したほか、日経ヴェリタスにも定期コラムを掲載。 22年1月退職後、合同会社マーケットエッセンシャルを設立し、週刊のニュースレター「今週のマーケットエッセンシャル」や月刊の電子書籍「月刊マーケットエッセンシャル」を発行している。ほかに、『企業会計』(中央経済社)や『月刊資本市場』(資本市場研究会)に定期寄稿。