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[【事業承継】中堅中小企業の事業承継M&A ~会計税務の実務上の頻出論点~(M&Aキャピタルパートナーズ)]

(2019/06/28)

<新連載>【第1回】 廃業・清算とM&Aにおける税務上の比較

桜井 博一(M&Aキャピタルパートナーズ 企業情報第二部 公認会計士・税理士)

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はじめに


  近年、M&Aの件数は増加傾向にあり、2018年の公表されたM&Aの件数だけでも3850件(レコフデータ調べ)と過去最高を更新しました。その件数を押し上げているのは、後継者不在に起因した中堅・中小企業の事業承継M&Aの増加によるところが大きいと考えられます。事業承継M&Aを推進するにあたっては、案件の検討から始まり、スキーム構築、交渉過程、最終契約の締結に至るまで、税務リスクを回避し、当事者が最大限の経済的メリットを得るためにも、常に会計・税務の論点を考慮する必要があります。

  一方、事業承継M&Aの実務では、そのスキームのほとんどが株式譲渡によることが多いため、大企業のM&Aと比べ、スキーム自体は非常にシンプルであることも事実です。そのため、論点となるポイントはある程度決まっており、筆者も実務上、現場で売手や買手企業、他のアドバイザーから相談やアドバイスを求められることが多いですが、重複した質問や相談内容が散見されます。

  そこで、本講座では全10回(予定)にわたって連載し、毎回テーマを決め、同テーマに沿った会計・税務の実務上の論点やM&Aの実務担当者なら最低限知っておきたいポイントを事業承継M&Aに焦点をあて、M&A実務の現場で仲介に携わる専門家の立場から、できる限り分かりやすく解説します。

  第1回目は、事業承継M&Aの実務でよく論点になる、M&Aを行った場合と廃業・清算した場合の税務上の比較について解説します。

  なお、本連載の前提として、買手となる会社を「買手会社」、売却の対象となる会社を「対象会社」、対象会社の株主を「売手」と表記し、事業承継M&Aにおけるオーソドックスなスキームでもある株式譲渡(買手会社:法人、売手:個人)を前提とした記述であることにご留意ください。

そもそも事業承継の選択肢とは?

  税務上の話に入る前に、まず、売手の事業承継にはどのような選択肢があるかについて整理したいと思います。

  売手が保有する株式をどのように承継するか、という選択肢は大きく以下の4つにわかれます。


  上記の図から、中堅・中小企業の事業承継において、親族の後継者候補不在のケースでは、①廃業・清算、②役職員への承継、③株式公開(IPO)、④第三者への承継(M&A)、の4つが選択肢として残りますが、事実上、役職員では高額な株式の買取資金を準備できないケースが多く、また、株式公開も時間や費用の観点からも中堅・中小企業には現実的ではないケースが多いといえます。

  従って、中堅・中小企業における後継者候補不在のケースでは、①第三者への承継(M&A)か、②廃業・清算の2択に実質的に絞られ、経営者はそのどちらかを将来的に選択する必要が出てくるといえます。そのような中、後継者候補不在のケースでは、そもそも将来的に会社を廃業・清算する前提で現状の事業を行っているケースや、M&Aに対する情報不足や認識の誤りから、黒字の優良企業でありながらも、廃業・清算を選ぶ経営者も決して少なくありません。

  一方で、近年では中堅・中小企業のM&Aが事業承継の手段として徐々に一般化してきており、取引金融機関等を通じて情報も行き届いてきているため、後継者不在という理由のみをもって、会社を廃業・清算させるという選択肢をとる経営者は減少してきているのではないかと思うのが現場での実感です。

  ただし、純資産が潤沢な優良な会社や無借金の会社ほど、会社を廃業・清算させた方が、時価の純資産に相当する財産を全て受け取れるのではないか、と誤認している経営者も意外に多く、廃業・清算の場合とM&Aを行った場合の、両者の税務上の相違点を正確に把握しているオーナーは意外に少ないのが実情といえます。

  そこで、廃業・清算した場合とM&Aをした場合における、税務上の相違点を明確にし、経済条件(売手の手取り額)に与える影響やポイントについて理解することが重要です。

なお、廃業・清算に至るケースとしては様々な要因が考えられますが、本記事では、資産超過の状態の黒字企業で、後継者が不在という理由のみをもって事業を継続することが困難になった場合の会社を想定しています。



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