M&A専門誌マール 2024年11月号 361号(2024/10/15発売)

特集: 第一生命HD、 ベネワン対抗TOB成功の舞台裏

第一生命ホールディングス(HD)は2024年5月22日、福利厚生サービスを手掛けるベネフィット・ワンを完全子会社化するための手続きを完了した。買収総額は約2920億円となる。
ベネフィット・ワンを巡って、医療情報サイトを運営するエムスリーと第一生命HDの買収合戦が繰り広げられた。エムスリーは2023年11月にベネフィット・ワン株式の過半数を1株1600円で買い取る提案を行ったが、エムスリー案に対して第一生命HDがわずか3週間後に対抗TOBを提案。TOB価格を1株2173円に引き上げ株主の賛同を得たことで、エムスリーの買収提案は不成立となり、第一生命HDによるTOBが成立した。
今回のベネフィット・ワン買収は、伝統的な大企業がすでに進行中のTOBに対抗提案をする日本では異例のケースとして大きな注目を浴びた。
第一生命HDが対抗的手段も辞さなかった背景には、国内生保市場が人口減少によって先細りする中での強い危機感がある。第一生命HDは2024年3月29日に発表した新中期経営計画で、2026年度末までに2023年度始時点の時価総額(3兆円)を倍増させる目標を掲げている。目標達成に向け、ベネフィット・ワンは、第一生命HDにとって重要な事業体となる。
今回のTOBのポイントは、第一生命HDが通常のM&Aでは考えられない短期間で社内意思決定をまとめ上げ、提案を成功させた点にある。同社が、今回の対抗TOB進行のプロセスでどのような意思決定を行ってきたのか。担当幹部に詳細を聞いた。

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