[【クロスボーダーM&A】ベトナム投資の基礎知識 [マクロ経済動向]]

(2010/09/01)

連載スタートにあたって

トラン・ホアイ・ヴー

< こちらの記事は、会員登録不要でご覧いただけます >

ベトナムについては戦争が長く続いていた国としての印象が強い。その一方で20年余りにわたって加速する経済成長の路線に乗っていることも知られている。社会・経済の変化・発展と共に、ベトナム産業も国内のみならず世界市場に目を向け始めている。つまり、中央計画経済から市場経済へ転換する過程において、自らの変革と共に世界の市場経済に積極的に参加するようになってきた。ベトナムは、1945年独立して1975年の南北統一となって以降の10年間、その経済は停滞した。その困窮の中から、1986年ドイモイ政策という刷新が行われ、その結果、現在は最貧困国群から脱却し、年間一人当たりGDPは1,000米ドル台まで上昇した。さらに政府の方針では、2020年までに工業国となる目標を掲げて国民の豊かさ実現のために一層の経済成長を促進しようとしている。ベトナム共産党は、この目標を具体化するために、2011年初めの党大会で今後の5ヶ年計画や10年ビジョンを公表する予定である。
国際政治経済と外交の面では、ベトナムは1995年東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟し、また同年にアメリカとも国交正常化した。1998年にはAPECに参加し、2001年に米国通商協定(BTA)が発効され、そして2007年には長年の懸案であった世界貿易機関(WTO)の正式メンバーとなり世界で認められた国家となった。
ベトナムと日本との関係でいえば、日越交流は古くは8世紀から始まったが、現代の両国外交関係は1973年から始まった。この数年、日本企業の中には今後の中国リスクを軽減するためにチャイナ・プラス・ワン戦略を取り始めているところもあり、ベトナムも含めアジア各国への工場シフトが活発化している。日本とベトナムは、文化的な価値観、国民性などに類似点が多くて親和性があり、また人口構造の違いには大きな補完関係があるなどの利点を踏まえて、これからのベトナムとの相互交流に対する日本の注目度が高まっている。
これらの潮流にベトナムが今後乗り切れるかどうか、そしてさらにベトナム産業が海外からの期待に応えようとしてどのように動いているのか、これらを問題意識として調べたいと思う。
このコラムでは、既にベトナムに進出している企業、またはこれからベトナムに進出しようと考えている企業幹部の方々へ、成長するベトナムを順次紹介することにより、その全体像を知っていただくよう模索してみたい。また、ベトナム人の声として母国からの便りのコラムを通して日本人の皆さんに送りたい。筆者の能力不足はご容赦いただくことにして、いくらかなりとも読者のご参考となれば幸いです。
このコラムの計画としては、ベトナムのマクロ経済全般を紹介した後、それぞれの産業を調査していく。特に近年、ベトナムではM&Aが盛んになってきたので、この角度からも検討してみたい。
第1回のレポートは、ベトナムの労働市場について紹介する。

 

Profile
Tran Hoai Vu(トラン・ホアイ・ヴー)
国籍:ベトナム
2001年 ハノイ貿易大学卒業
2005年 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科入学
2008年 在日ベトナム学生青年協会会長
2008年 同大学院の修士課程終了、博士課程在籍中


 

  • 1
  • 2

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング