[クリーンテックと欧米エネルギー企業の最新M&A動向]

(2022/03/08)

【第2回】仏Totalの最新動向(前編)

出馬 弘昭(IZM代表)
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環境対応で先行するTotal

 前回はクリーンテック(脱炭素イノベーション)分野で、日本より格段に先行する欧米エネルギー大手企業のM&A動向の全体像を紹介した。今回以降は、より具体的に個社ごとの環境対応を紹介していく。

 まずは、前回でも少し触れた仏石油メジャーTotal(トタル)について取り上げる。Totalはスーパーメジャー6社(エクソンモービル、BP、ロイヤルダッチシェル、シェブロン、コノコフィリップス、トタル)のうちの1社であり、エネルギー企業の売上高ランキングでは世界第6位になる。

 環境意識の高い欧州の中でもフランスは特に先進的で、世界初の環境政策で先進国をリードしている。例えば、フランスは食料品店などの売れ残り食品の廃棄を禁止し、慈善団体などへの寄付を義務化した。プラスチック製のレジ袋や容器を使用禁止したほか、衣料品の廃棄を禁止するなど、次々と斬新な施策を法制化している。さらに、陸路2時間半で移動可能であれば、空路の廃止が検討されており、国民間に「Flight Shame」(飛び恥)の心情が広がっている。

 化石燃料を扱うがゆえに「2024パリ五輪」のスポンサーをおろされたTotalは、クリーンなエネルギーを生産し提供することを使命とすることを目的に、2021年に「TotalEnergies」に社名変更している。石油依存から脱却し、再生可能エネルギーと天然ガスにシフトし、グリーン電力会社を目指すことを大々的に宣言した。

 Totalの現在の電力小売り事業は順調であり、2018年にフランス国内3位で500万軒(国内シェア10%)、スペイン200万軒、ベルギー100万軒の顧客にまで拡大した。また、再生可能エネルギーは既に10GW保有しており、2030年までに再生可能エネルギー総設備容量100GWの達成を目指し、再生可能エネルギー分野で世界のトップ5となるべく事業拡大を続けている(注1)。100GWは、日本の電力ガス大手の 2030年目標の20倍の規模であることからも、日本とは桁違いであることが分かる。…

■筆者履歴
IZM代表 出馬 弘昭出馬弘昭(いずま ひろあき)
IZM代表。1983年京都大学工学部物理工学科卒業。大阪ガスに入社し、同社R&DおよびIT部門でデータ分析、行動観察、オープンイノベーション事業などを立上げ。2016年より米シリコンバレーに駐在し、欧米のクリーンテックとのビジネス開発を開拓。2018年に東京ガスに入社し、シリコンバレーのCVC立上げに参画。2021年に帰国し、東北電力に入社し、事業創出部門のアドバイザーに従事。製造業やコンサルティング大手などの外部顧問、海外スタートアップの日本展開支援なども務める。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学非常勤講師、大阪市立大学非常勤講師、日本オペレーションズリサーチ学会副会長などを歴任。

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