[クリーンテックと欧米エネルギー企業の最新M&A動向]

(2023/02/08)

【第13回】欧米電力大手、英セントリカ(Centrica)のM&A戦略(後編)

出馬 弘昭(IZM代表)
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 英セントリカ(Centrica)のM&A戦略(前編)では1990年代の電力自由化以降のワンストップサービス、発電所および海外事業のM&Aの歴史を紹介した。後編では2015年から注力している同社の「顧客重視」への取り組みとして、スマートホーム事業、e-モビリティ事業およびVPP(仮想発電所)・DR(デマンドレスポンス)事業でのスタートアップの投資とM&Aを紹介する。Centrica本体および2017年に設立したCVC子会社Centrica Innovations(CI)による投資とM&Aである。

スマートホーム事業

 2015年、Centricaはスマートホームスタートアップの英AlertMe(2006年創業)を買収してHiveブランドの子会社を設立。英国のスマートホーム市場に参入した。同社はスマートカメラ、スマートサーモスタット、スマートロック、スマートプラグなどの製品を開発し、家電などをインターネットに接続し、遠隔監視・制御サービスを提供する。Hiveスマートサーモスタットは英国でシェア1位になるなど、スマートホーム大手になった。

 一時期、買収したDirect EnergyがヒューストンでHiveビジネスを展開した。筆者は2019年にヒューストンに出張した際、当地最大の商業施設ギャレリアでHive製品を大々的に宣伝しているのを見た。しかし、北米ではアマゾンやグーグルのスマートホーム機器が圧倒的に強く、Hiveは北米市場から撤退した。

 その後、Centricaは欧州のスタートアップ出資を重ね、欧州でのスマートホーム事業拡大に専念している。Hiveの欧州他地域展開としては、2017年にイタリアのガス大手Eni GasにHiveの提供を開始した。またフランスにも展開した。

 2019年、分散型エネルギーリソースの管理プラットフォームの独GreenCom Network(2011年創業)、スマート給湯器の英Mixergy(2014年創業)のIoT関連スタートアップ2社に出資した。これにより、家庭での省エネ向上(温水器の節電など)および分散型電力の系統連携を可能にするIoTプラットフォームを強化した。

■ 筆者履歴
IZM代表 出馬 弘昭出馬弘昭(いずま ひろあき)
IZM代表。1983年京都大学工学部機械系物理工学科卒業。大阪ガスに入社し、同社R&DおよびIT部門でデータ分析、行動観察、オープンイノベーション事業などを立上げ。2016年より米シリコンバレーに駐在し、欧米クリーンテックとのビジネス開発を開拓。2018年に東京ガスに入社し、シリコンバレーのCVC立上げに参画。2021年に帰国し、東北電力に入社し、事業創出部門のアドバイザーに従事。製造業やコンサルティング大手などの外部顧問、海外スタートアップの日本展開支援なども務める。2022年、大阪大学フォーサイトの取締役、東京都の脱炭素化Fund of FundsとインベストメントLabのアドバイザーに就任。南カリフォルニア大学ロボット研究所客員研究員、京都大学非常勤講師、大阪市立大学非常勤講師、日本オペレーションズリサーチ学会副会長などを歴任。
大阪大学フォーサイト https://ou-foresight.com
東京都の脱炭素化FoF https://www.tokyo-vc-fof.jp/
インベストメントLab https://www.investmentlab.co.jp/

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