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[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2020年9月号 311号

(2020/08/17)

第185回 情報システム業界~技術革新が生む新たなM&Aの潮流~

岩田 惟富(レコフ)
1.前書き

 先日、将棋棋士の藤井聡太七段が棋聖のタイトルを獲得した。藤井新棋聖のニュースは連日報道されていたが、筆者が印象的だったのはランチのメニューでなく、棋聖戦第2局、58手目に指した「3-銀」の手と、将棋AIの読みが比較されたニュースだった。AIが名人に勝利したことは数年前に話題になったが、プロ棋士のトレーニングやタイトル戦の解説にAIがあたりまえのように入り込み、AIが将棋界を支えるインフラの一部になったと感じた。

 AIに象徴されるIT技術の発展が、IT業界の中での伝統分野といえる情報システム産業のM&Aに、どのような影響を与えているのだろうか。2020年1月に東証1部からのMBOによる非上場化が発表された豆蔵ホールディングス(豆蔵HD)の開示資料にも業界を取り巻く様々な課題を読み取ることができる。本稿では、これまでの情報システム業界のM&Aの歴史について改めて整理するとともに、業界環境の変化に伴う本業界におけるM&Aの今後について考察していく。


2.情報システム業界について

 情報システム業とは、顧客の委託により、顧客に対して情報システムの企画、開発、運用、保守といったサービスを提供するビジネスと定義される。その業界規模を定量的に表す資料としては、特定サービス産業動態統計(経済産業省公表)がある。同統計よると2019年の国内の情報サービス業の規模は約12兆円、このうち、本稿で定義する情報システム業に最も類似すると想定される「受注ソフトウェア」は約7兆円(うち「システムインテグレーション」は約5兆円)となっている。同統計は「当該業種の年間売上高の概ね7割~8割をカバーする売上高上位の企業(又は事業所) を調査対象」としており、これを元に試算をすると情報システム業の市場規模は9〜10兆円程度と推察される。

 国内における情報システム業界は、顧客が社内システムを構築する場合、伝統的に元請企業(主に大手SIer)に発注し、元請企業から下請企業に下流工程を発注し、その下請企業が開発の一部をさらに別の下請企業に発注するというピラミッド型の多重下請構造を形成している。また、下請企業への発注単価は「人月単価×工数」で決められることが一般的であり、本業界は労働集約的なモデルとなっている。しかし、後述するが、近年においては、上記のような伝統的な業界構造が、産業のデジタル化、スピードの要請、クラウド化、モバイル化といったことで変革期を迎えている。

 本業界の主要なプレーヤーとしては、上記のピラミッド型の業界構造の上位に位置する元請企業である大手SIerと二次請、三次請の下請企業に大別される。また、大手SIerはその企業の成り立ちによって、一般的にメーカー系、ユーザー系、コンサルティング系、独立系に分類される(図表1)。

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