[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2022年3月号 329号

(2022/02/09)

第203回 玩具製造業界~バンダイナムコHDとタカラトミーの戦略・展開~

小林 絢子(レコフ 企画管理部)
  • A,B,EXコース
1. はじめに

 2020年に映画「鬼滅の刃」が、歴代興行収入額で映画「千と千尋の神隠し」を抜いてトップに立ち、世間を驚かせた。筆者も、友人から勧められて鑑賞したところ見事に心を奪われ、上映期間中に3回劇場へ足を運んだ。「鬼滅の刃」の映画公開が10月だったため、その年のクリスマスシーズンには「鬼滅の刃」関連の玩具が多数販売され、売り切れが相次いだ。街を歩けば、「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎のトレードマークである市松模様のグッズが必ず目に入る。このコロナ禍でも、ここまで熱狂的なブームを巻き起こした「鬼滅の刃」は、2020年の玩具売上金額にどの程度貢献しているのだろう、とふと気になり、調べてみたことが本稿を書くきっかけとなった。

 「玩具業界」は、大きく「ゲーム分野」と「おもちゃ分野」に分かれる。また、「製造業」と「卸売業」にも分けることも出来る。明確な線引きが難しい業界だ。「ゲーム分野」の中でも、家庭用ゲーム機からオンラインゲーム、スマートフォンアプリ等、その種類は多岐に渡る。今回は玩具業界の中で、本稿を書くきっかけとなった「おもちゃ分野」の「製造業」について述べていきたい。


2. 玩具市場の概況

 経済産業省の生産動態統計によると、「玩具」の販売金額は10年連続増加している。

玩具の販売金額

 特に2020年は、コロナ禍による巣ごもり需要が追い風となり、対前年比123.8%の656.4億円となった。

 その中でも、2019年と比較して最も伸び率が高いのはジグソーパズルだ。巣ごもり需要の影響が顕著に出ている。次いで伸び率が高いのは「ハイテク系トレンドトイ」というもので、AIやカメラ等、多機能が搭載された玩具を指す。

 また、2020年度から小中高(高校は2022年度から)でプログラミング教育が必修化した影響で、プログラミングに関わる玩具への関心が高まっているようだ(『日本ネット経済新聞』2020年4月9日)。小学校の基礎科目やプログラミングが学べる内容の商材が多数市場に出回っている。日本人の「真面目な気質」が分かりやすく反映された興味深い結果である。

図表

 このように、玩具業界は、TVアニメの流行や社会情勢に左右される業界であるにも関わらず、10年連続販売金額増加ということから、今後も成長が見込める市場であると言えよう。日本玩具協会の発表によると、2020年度の日本国内における玩具市場規模は、

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