MARR Careerにご登録中の求職者には、30代と40代のミドル層を中心に、20代から60代まで、幅広い年代の方がいらっしゃいます。年代別のM&A実務経験年数は、20代は3年未満、30代は3年以上10年未満、40代以降は10年以上が最多です。そして求職者の多くが、企業の経営企画・経営戦略業務へのキャリアチェンジを志向し、事業会社や、投資先に経営人材を派遣するPEファンドへの転職を希望しています。
「自身の価値を顕在化できる職場に転職したい」「M&Aのトラックレコードをもっと積みたい」「クロスボーダーM&Aをやりたい」「アドバイザーではなく会社の中に入ってM&Aを支援したい」――等々、転職の理由は様々です。新たな環境に活動の場を移すと決めたら、これまでの業務経験の中で自分の得意・不得意、実務経験やスキルが不足している分野、やっていて楽しいと感じる業務とそうでない業務など自分独自の視点をふまえて将来をイメージし、次に何をすべきかを考えます。
また、M&Aの実務経験を活かして、企業経営に関わる仕事に転職するには、最初にM&A人材の意味や役割といった、「M&A人材の定義」を知ることが大切です。その次に、M&A人材に必要なスキルや特性といった、「M&A人材の要件」の理解を深めます。
M&A人材の定義
M&A人材とは、企業価値向上を目的に、M&Aによる経営課題の解決や成長戦略を実現するための能力と経験を持つ人材を言います。以下はM&A人材を所属先で分類し、M&Aへの関わり方と役割を整理した表です。
[表] M&A人材のM&Aへの関わり方と役割所属先 | M&Aへの関わり方 | M&A人材の役割 |
事業会社 | 自社の企業価値向上・経営戦略の実現のための手段としてM&Aを実行 | ・経営陣(CxO) ・経営企画 ・事業責任者 ・M&A担当者 ・新規事業開発、CVC運営 ・法務、財務、税務担当 |
PEファンド | 企業の経営権を取得し、投資先企業の経営に積極的に関与することで企業価値を高め、その後企業を売却して投資収益を獲得 | ・投資担当 ・投資先支援担当(バリューアップ) ・ファンド運営担当 |
投資銀行 証券、銀行 FAS・ブティック | 顧客企業の利益の最大化を図るためのM&A助言業務 | ・FA(フィナンシャルアドバイザー) |
コンサルティングファーム | デュー・ディリジェンス業務やPMIの実行支援、買収時のPR助言、総合的な財務アドバイスなど各分野の専門的な助言 | ・経営コンサルタント ・財務コンサルタント ・組織・人事コンサルタント ・PRコンサルタント |
M&A仲介会社 | 主に中堅・中小企業の事業承継M&Aにおいて、売り手と買い手の交渉を仲介し、M&Aの成立に向けて相手先の紹介と調整 | ・M&A仲介者 |
専門事務所 | 法務・財務・税務のデュー・ディリジェンスやM&A実行のために必要な専門的な助言業務 | ・弁護士 ・公認会計士 ・税理士 |
一口に「M&A人材」と言っても、所属先によってM&Aへの関わり方が違うことが分かります。M&Aへの関わり方が違えば、果たすべき役割が異なり、必要なスキルや経験も変わります。
事業会社への転職を例に挙げます。事業会社にとってのM&Aは、目的ではなく経営戦略実現のための一つの手段に過ぎません。また、M&Aに対するスタンスは会社によって異なり、プログラマティック(年に1〜2件以上の中小規模の買収を実施する(※))にM&Aを行う日本企業は多くはないのが現状です。ゆえに、事業会社ではM&Aのみならず幅広く会社全般の経営戦略、財務及び法務の実務知識があることが望まれます。
20代~30代半ばの方であれば、中長期的な視点でキャリアを考えることをお勧めします。現在の会社で、経営戦略、財務及び法務の実務知識、セールス・マーケティングといった各分野に加え、コミュニケーション・ツールとして、小さな単位ではなく会社全体に影響を及ぼすレベルでの文書作成や数値計画・数値管理といった汎用的なビジネススキルを自ら意識的に習得するよう努めます。更には、専門家や他部署の人を含む多人数のプロジェクト・マネジメントのノウハウを身につけると、M&Aディールの取り組みにも役立ちます。そして事業会社への転職の前に、金融機関やFAS・ブティック等でFA(フィナンシャルアドバイザー)の実務経験を積むことも重要なキャリアのステップとして提案します。FAの実務経験に加えて、業務に生かせるレベルの財務分析スキルを習得できれば、他の転職者との差別化要因となり、M&A人材として事業会社へ転職できる可能性を高めることができます。
「ポストコンサル」のキャリアと言われるPEファンドへの転職は、M&Aの観点では、事業会社から転職できる可能性はあります。PEファンドと事業会社の双方にとってM&Aはクライアントワークではなく「自分事」であり、自らのリソースを使って事業のバリューアップを行い、企業価値を高めることへの目的意識と実行力が求められる点は共通しています。PEファンドの投資先には経営のプロ人材として派遣される為、テクニカルな専門知識だけでなく人を巻き込んでいく人間力や忍耐力、決断力も問われる厳しい仕事ですが、PEファンドでキャリアを積めば、その後の起業や独立への道が開きやすくなります。
キャリアの現在地を測る
所属先を跨いだ転職の難易度は上がると考えて、早い段階から自身のキャリアを見据えた準備を始めることが望ましいです。どこに所属してどのようにM&Aに関わっていきたいかを念頭に置いて自身のキャリアを考えることが、転職の可能性に大きな差を生じさせます。MARR Careerは、M&A業界に精通した専任のコンサルタントがこれまでの職務経歴を振り返る「キャリアの棚卸し」のお手伝いをします。「キャリアの棚卸し」をすることによって、求職者の方はご自身の「M&A人材」としての現在地を測ることができます。お気軽にご相談ください。
※参考記事
プログラマティックM&Aなどの4つのM&Aの類型の解説は、MARRの以下の記事が参考になります。
(MARR Career運営事務局 泉 繭)
MARR Careerおすすめ求人(求人情報は予告なく変更となる場合があります。)

M&A人材の採用にご関心のある企業様、M&Aの業務経験・スキルを持ち転職をお考えの皆様、そしてM&A未経験で今後M&A人材を目指す皆様のご連絡をお待ちしております。