[M&A戦略と会計・税務・財務]

2015年5月号 247号

(2015/04/14)

第95回 クロスボーダーM&Aにおけるカーブアウト取引の留意点

吉田 あかね(プライスウォーターハウスクーパース 公認会計士 ディレクター)
  • A,B,EXコース

1.はじめに

  本稿では、近年増加傾向にあるクロスボーダーM&Aにおけるカーブアウト取引(いわゆる一部事業譲り受け)を材料として、そのプロセスにおける留意点等について解説を行うものである。読者の方々は既にご理解のとおり、M&Aは非常に個性の強い取引であり、個々の案件毎に重点を置いて検討すべきポイントは異なるものである。よって、本稿での事例はあくまでも参考事例である。なお、本文中の意見に関する部分は、筆者の私見であることをあらかじめお断りする。

  2012年から2014年の間に実施されたM&A取引を、レコフデータ社提供のデータを基に形態別に集計すると、金額ベースで全取引に占める事業譲り受けの割合は、おおむね20%となっている。(図表1)

(図表1)M&Aの形態:株式譲り受けと事業譲り受け

  ところで、事業会社のM&Aの目的には大きく分けて5つの分類があると私は考えている。 第一に、地域獲得。地域的な新市場の獲得であり、IN-OUTの場合には、買収を通じてこれまで商品やサービスの販売を行っていない国や地域に参入することを目的としたものである。既存の商材を新市場で展開するために、地域の販売網を買収するケースなどが当てはまる。

  第二に、自社でこれまで扱ってこなかった新商材や新サービスの獲得を目的としたもの。買収対象企業が有する特殊な技術や知的財産(IP)などを買収することが該当する。

  第三に、バリューチェーンの効率化および強化。たとえば、高度な研究開発を必要とする製薬会社が外部の研究開発機能を買収する事例や、現地での製造能力を短期間で高めるために、現地製造会社を買収する事例が該当する。

  第四に、権益の獲得。特に海外の資源に関する権益を取得するため、その権益を保有、もしくは取得が見込まれる会社を買収する事例が当てはまる。

  第五に、それ以外の取引、たとえば、ファンドによるキャピタルゲインを狙ったバイアウトなどが該当する。

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