[押さえておきたい新時代のM&A~海外M&Aのカギを握るリスク管理]

2024年11月号 361号

(2024/10/09)

第2回:投資先・提携先・取引先等の属性把握・誠実性評価の重要性

伊藤 俊介(KPMG FAS 執行役員 パートナー)
長岡 英美(同 シニアマネージャー)
  • A,B,C,EXコース
1.従来型DDによる不正等リスク検知の限界

 第1回では、新時代における日本企業の海外M&Aは、成長著しい新たな国・地域での地産地消を目指すことが重要であり、現地国の未知で多様なビジネスパートナー開拓に伴うリスク対応が必要となること、中でも特に不正やコンプライアンス上のリスク(以下「不正等リスク」とする。)への対応の高度化が重要であることを解説した。

 M&Aにおけるリスク対応では、デューデリジェンス(以下「DD」とする。)の実施が定番だが、DDの調査項目は多岐にわたる。主要なDDだけでも「事業DD」「財務DD」「税務DD」「法務DD」「人事DD」「ITDD」などが挙げられる。

 このうち、財務DDの実施により不正等リスクの検知を期待する向きも多いと思われる。しかし財務DDでは、


■筆者プロフィール■

伊藤 俊介(いとう・しゅんすけ)伊藤 俊介(いとう・しゅんすけ)
KPMG FAS 執行役員 パートナー
グローバルにビジネスを展開する幅広い業界の企業を対象に、インテリジェンス調査、不正調査、サイバーセキュリティ、コンプライアンスデューデリジェンス、不正リスク管理支援、地政学リスク対応支援、係争・Eディスカバリ対応支援等の各種フォレンジック・危機対応・リスクコンサルティングサービスを提供している。またKPMGシンガポールでの駐在をはじめとして海外ビジネスに関する経験も豊富であり、企業が海外において直面する様々なリスクへの予防や対応の支援を行っている。KPMG FAS入社以前にはNYSE上場米国リスクコンサルティングファームの日本支社代表を務め、約10年間にわたって国内外の不正調査やインテリジェンス調査等の各種プロジェクトを統括した。

長岡 英美(ながおか・えみ)長岡 英美(ながおか・えみ)
KPMG FAS シニアマネージャー
インテリジェンス調査、不正調査、コンプライアンス調査等の調査に10年近く携わり、国内外でビジネスを展開する企業への支援を行っている。KPMG FASではこれらの調査以外にも、インテリジェンス調査の手法を人権デュー・デリジェンスなどに活用し、クライアントのサプライヤーにおける人権侵害やESG問題の有無や実態把握といった支援も行っている。KPMG FAS入社前は、テレビ局報道番組制作・記者として海外情勢の報道経験を経てリスク・マネジメント業界に転じ、以来米国リスクコンサルティングファームや米国の大手テックファーム等にてクロスボーダーの不正調査、インテリジェンス調査、経済制裁関連調査をはじめとする様々な調査の経験を有する。

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