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[ニューノーマル時代の日本企業M&Aの指針]

2021年5月号 319号

(2021/04/15)

第5回 ビジネスドリブンの組織デザインと人員適正化

小原 広太郎(マーサー ジャパン M&Aアドバイザリーサービス部門 マネージャー)
雇用調整という一大事業

 2020年の冬ごろから、国内外での人員削減に関するご相談を当社宛にいただくことが増えてきたという実感がある。

 政府による緊急事態宣言が発出され我々の生活様式が一変してから、そろそろ一年が経過しようとしている。一向に出口が見えない景気後退局面のなか、当初は雇用に手を付けずに耐え忍んできた大手企業でさえも、いよいよ雇用調整に踏み切らざるを得ない状況が訪れつつあるように感じる。事実、2021年に入ってからだけでも、三陽商会・近畿日本鉄道・IMAGICAが相次いで希望退職の募集を発表しているし、ホンダや日産による海外での人員削減計画も報じられた。

 担当役員・担当者として実際に人員整理の矢面に立ったことがあれば、どれほどの苦労を伴うものかは骨身に沁みているだろうし、「機会があれば是非もう一度」と前のめりになれる人は中々いないのではないだろうか。

 その一方で、これまでもM&Aの場面では、拠点の統廃合や重複機能の廃止による人員規模の適正化を前提に、クロージング後のビジネスプランが組まれていることが珍しくなかった。大量の失業者を生むことにつながるこうした施策は、通常、従業員や地域社会からの強い抵抗・反感を免れ得ない。特に、新しくやって来た親会社の外国人たちが大ナタを振るったとなれば尚更であり、クロスボーダーM&Aにおける組織・人事イシューの中でも最も難易度が高い取り組みの一つである。

 計画・準備は慎重に、やると決めたら「大手術は一度きり」と腹を据えて大胆に、そしてコミュニケーションはきめ細やかに、と場面・場面で適切に振る舞うことが求められる。その点において、労働問題に強い弁護士事務所や現地のアウトプレースメント会社、豊富な知見を有する人事アドバイザーなど、「その道のプロ」たちの力を借りることは決して悪いことではない。

 では、M&Aの文脈の中で行われるこの一大事業を通じて、成し遂げるべき目的は果たしてコストカットだけなのだろうか? 


人員削減なのか、人員適正化なのか

 コストカットのみが目的であれば、通常、既存の組織構造を大きく変えない前提で進められる。この場合、労働分配率や売上高人件費率などからコスト削減目標を割り出し、そこに向かって対象人数を積み上げていく、というアプローチを採ることが多い。その中で不採算事業所の閉鎖や、バックオフィスの集約化が行われることもあるが、基本的には計画はコストドリブンで立てられており、結果的に組織の一部にメスが入ったのだと解される。

 例えば、米・ミルウォーキーに不採算の工場があったとする。同工場主力の製品群Aはドイツとブラジルでも生産されており、供給体制の維持は可能であることから、工場閉鎖によるコスト削減が計画の本線である。しかしながら、人員削減と併せて生産ライン更新等々によりターンアラウンドを図れる可能性もあり、有力な選択肢の一つとして検討されている。些か語弊のある書き振りかもしれないが、詰まるところ、コスト目標が達成できさえすればどちらでも構わない。

 これに対して、「ミルウォーキー工場は閉鎖する。なぜなら、製品群Bを主力とするケンタッキー工場の設備投資が完了すれば、製品群Aの生産を集約しても、中期経営計画にある年5%の需要拡大に対応する生産目標は十分に達成可能だからである。ケンタッキー工場で増員が必要となるが、ネットしてみれば800人の余剰人員を適正化できる」というストーリーで計画が立てられることもある。すなわち、ビジネスプランを実現するために必要な組織体制・サイズ(機能と人数)を定義し、そこから適正人員数を導き出したうえで人数の余剰を解消する、というビジネスドリブンのアプローチである。ここではコストカット以上に利益創出、ビジネスの成長に重きが置かれる。

 一般に明確な使い分けのルールは無いと思われるが、

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