[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2020年4月号 306号

(2020/03/16)

アドバンテッジパートナーズの担当者が語る「富士通インターコネクトテクノロジーズの成長戦略」

  • A,B,EXコース
早川 裕(アドバンテッジパートナーズ パートナー)

早川 裕(アドバンテッジパートナーズ パートナー)

スーパーコンピューター「京」、「富岳」に基板供給

 2020年1月、アドバンテッジパートナーズ(以下AP)が運営するアドバンテッジパートナーズV号ファンドが出資する特別目的会社が、富士通の子会社である富士通インターコネクトテクノロジーズ(以下「FICT」)の80%の株式を取得した。FICTはベトナムに完全子会社Fujitsu Computer Products of Vietnam, Inc.(以下「FCV」)を持っている。

 FICTは、スーパーコンピューターやハイエンドサーバー、ICTインフラ、半導体機器、スマートデバイスと、基幹製品からコンシューマ製品に至るまで幅広い製品を支える基板商品を製造している。スーパーコンピューター「京(けい)」や「富岳」の基板製造を行うなど高い技術を持っている。富士通と理化学研究所が共同開発した富岳は、世界一の計算速度を記録して最先端の研究に貢献した「京」の後継機だ。FICTの19年3月期の売上高は254億円となっている。

 富士通は15年10月、田中達也会長(当時社長)が、事業構造の抜本的な見直しを進める「ビジネスモデルの変革」を宣言した。同社が優位性を持つICTサービス分野に経営資源を集中し、テクノロジーソリューション事業のグローバルな成長を目指すという戦略で、この方針のもと、パソコンや携帯電話などのユビキタスソリューション事業やLSI・電子部品などのデバイスソリューション事業については分社化し、同社が優位性を持つICTサービス分野に経営資源を集中して、「テクノロジーソリューション」事業のグローバルな成長を図っている。

 このため、ISP(インターネットサービスプロバイダー)を中心とする個人向け事業については、17年4月に家電量販店のノジマに約250億円で売却したのをはじめ、18年5月にはパソコン事業を手がける子会社を中国の聯想(レノボ)グループに売却して、合弁会社「富士通クライアントコンピューティング」として新たにスタートさせるなどの構造改革を断行。さらに、市場の縮小が続く携帯電話事業についても事実上撤退を決め、18年3月、携帯電話事業をプライベートエクイティ(PE)ファンドのポラリス・キャピタル・グループ(以下ポラリス)に売却した。FICTのAPへの株式売却もこうした構造改革の一環である。

 APは、1997年に日本で最初のPEファンドを設立。現在、日本の中堅企業を対象としたバイアウトファンド、アジアの中堅企業を対象としたバイアウトファンド、マイノリティ投資を通して上場企業の成長支援を行うプライベートソリューションファンドの運営を行っており、これまでにポッカ・クラシエフーズ、成城石井、コメダ珈琲等60件を超える投資実績を持つ。

 APの早川裕パートナーに、FICT買収の経緯と成長戦略を聞いた。

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