[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2016年12月号 266号

(2016/11/15)

日本初の“温泉旅館特化”REITを上場した大江戸温泉HDの狙い

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2015年ベインキャピタルの傘下に

大江戸温泉物語グループの傘下に入った熱海の「ホテル水葉亭」  温泉旅館・温浴施設の運営を行う大江戸温泉物語ホールディングス(HD)が、「大江戸温泉リート投資法人」を設立、2016年8月31日に東京証券取引所の不動産投資信託証券市場に上場した。REITは、投資家から集めた資金で不動産を運用し、賃貸料、売却益などの収益を分配する投資信託だが、温泉施設に特化したREITの組成・上場は国内初ということもあって注目されている。

  大江戸温泉HDは、国際的プライベート・エクイティ(PE)投資会社であるベインキャピタルが、15年3月、全株式を取得(買収額は公表されていないが約500億円と見られている)、現在ベインキャピタル参画のもとに経営改革を行い、新たな成長戦略を進めている。

  当時の大江戸温泉物語は、東京都お台場の大規模日帰り温泉「お台場大江戸温泉物語」をはじめ、全国に23の温泉旅館と6カ所の温浴施設・テーマパークを展開し、年間約500万人が利用。売上高は07年以降毎年30%成長を達成しており、15年2月期の売上高は350億円という国内最大手の温泉旅館チェーンだった。

  ベインキャピタルは全世界で総額750億ドルを越える運用資産を持っており、06年に東京拠点を開設した。東京オフィスには事業会社・コンサルティング会社での経験を持つ約30人のスタッフがおり、これまでジュピターショップチャンネル、ドミノピザ・ジャパン、ベルシステム24など12社に対して投資を行ってきた。最近では、14年10月9日に投資先のすかいらーくが、06年9月の上場廃止から8年1カ月ぶりに東京証券取引所第一部に再上場を果たしている。

  大江戸温泉HDの創業は、01年11月にさかのぼる。同社の設立は、ソフトバンクの本社が建つ予定が流れた東京・お台場の空き地利用を巡って東京都港湾局がコンペを実施し、10社を超える提案の中から「中高年も楽しめる江戸をテーマにした日帰り温泉施設」という構想が採用されたのがきっかけだった。当初はマスコミでも大きく取り上げられ、人気となった大江戸温泉だったが、その後、経営が思わしくなくなり、経営は04年キョウデングループの創業者である橋本ひろし氏の手にゆだねられることになった。

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