
2022年4月4日、東証に上場する企業がプライム、スタンダード、グロースの3つの新市場に移行し、約2カ月が経過しようとしている。東証の調べによれば、新たな上場維持基準への適合計画を開示し経過措置の適用を受ける「経過措置企業」は3市場で549社あり(4月4日時点)、今後も、非公開化やM&A、大株主による保有株式の市場売却等の資本政策に踏み切る企業は少なくないと市場では予測されている。経過措置企業が置かれている状況や、関東財務局による事前審査等に当たっての実務上の留意点について、浦田悠一弁護士に聞いた。
経過措置企業の実務対応の概況 ―― 経過措置企業は現在、どのような対応をとっているのでしょうか。
「関西の上場事業会社を主な顧客層としている立場からの現状認識にはなりますが、新市場区分の移行の前後で、新たな上場維持基準を充足しない経過措置企業は、大きく分けて、①非公開化(
MBO・親子上場の解消)、②大株主による保有株式の市場売却、③積極的なM&A、④大株主からの自社株買い――、を実施してきており、また、今後計画していると認識しています。
流通株式の定義が厳格になった結果、その他の変更とあいまって、流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率に関する上場維持基準を充足できなくなったことが背景にあります」
―― その4つは、上場維持基準の適合に向けた計画書からも見て取れるのですか。
「計画書からは直接読み取れません。そもそも、上場維持基準の厳格化を見据えて、上場維持基準の適合に向けた計画書の提出期限であった2021年末よりも前に、問題解消した会社も少なくありません。また、計画書の提出時点では機関決定をしておらず、市場株価に与える影響も大きい事柄ですから、どの会社も計画書には非公開化やM&Aに関する具体的な記載はしていません」
―― 新市場区分への移行は、会社が非公開化に踏み切るドライバーの一つになっているのでしょうか。
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■浦田 悠一(うらた・ゆういち)
2004年東京大学法学部卒業、2006年一橋大学法科大学院修了、2013年Columbia Law School(LL.M.)卒業、2013年~2014年Weil, Gotshal & Manges LLP (New York) 勤務。主な取扱分野は、会社法・M&Aであり、特に公開買付け、非公開化など上場会社案件を多く扱うほか、スタートアップ投資、業務提携、アクティビスト対応も行う。主な著書に、「新型コロナウイルスと企業法務」(2021年 商事法務)(共著)、「特殊状況下における株主総会・取締役会の実務」(2020年 商事法務)(共著)がある。