[Webインタビュー]

(2025/05/19)

【第182回】<MARR Pro ユーザーインタビュー> 第2回 G-FAS

――「MARR Pro」をFA・バリュエーション関連業務で有効活用

香取 武志 (G-FAS パートナー 公認会計士)
長嶺 龍(同 シニアコンサルタント 米国公認会計士)
村越 樹生 (同 コンサルタント 公認会計士)
左から村越氏、香取氏、長嶺氏
(左から村越氏、香取氏、長嶺氏)
レコフデータのM&Aデータベース「MARR Pro(マールプロ)」は、1996年以降に日本企業が関わったM&A、M&A関連情報計10万件超を収録しており、M&Aマーケット動向の把握やM&A戦略の立案をサポートするツールとして、M&A業務に携わる実務家や事業会社、研究機関など多くのプロフェッショナルに採用されています。当コーナーでは、「MARR Pro」のユーザーにインタビューを行い、M&Aの実務でどのようにデータベースが活用されているのかを紹介します。第2回は、G-FASでM&Aアドバザリー業務に関わる香取氏・長嶺氏・村越氏に聞きました。
―― G-FASはどのようなM&Aのファームなのですか。

香取 「G-FASは、M&Aに伴う財務・税務デューデリジェンスをベースとしたフィナンシャルアドバイザリー(FA)までのサービスをワンストップで提供するプロフェッショナルファームです。

 もともとは2004年に誕生した独立系M&AアドバイザリーのGCA(現フーリハン・ローキー)が母体です。2006年、GCA内でFAと財務・税務デューデリジェンスを一気通貫で対応できたほうがクライアントにとって有益だろうという狙いから、専業チームとして『株式会社デューデリジェンス』が立ち上がり、これが当社の出発点になりました。

 その後、社名は『DCo』を経て『GCA FAS』に変わります。ちょうどその頃から、我々FAS側はDDとバリュエーションを中心としたサービスだけではなく、クライアントのニーズに応じてストラクチャーアドバイスのみ、交渉アドバイスのみといったポイントアドバイスも行うようになり、そこからフルスコープのM&Aアドバイザリーサービスも手掛けるようになりました。

 そして2022年、GCAが米フーリハン・ローキーと経営統合したタイミングで、GCAの冠を外し『G-FAS』と改称しました。さらに2023年にMBOを実施し、フーリハン・ローキーとは引き続き戦略的提携パートナー関係を維持するという、現在の経営体制を築いています。

 G-FASの人員は約20名とコンパクトです。同じメンバーが案件ごとにDDもバリュエーションもFAもこなします。設立時の『FAと財務・税務デューデリジェンスを一気通貫に提供する』というコンセプトがまさに確立されていると考えており、FAの視点や評価の視点を活かしながらDDを行う、あるいはDDでディテールを把握しながらFAサービスを提供するといった付加価値の高いサービスが提供できています。財務のプロフェッショナルとしてお客様のM&A担当者の横に寄り添い、必要な部分を機動的に補うのが当社の一番の特徴だと考えています。

 今では中小規模から大規模案件まで規模・業種を問わず対応する体制が整っており、当社はファイナンシャル・アドバイザーという名称の通り、M&Aにかかわるファイナンシャルな部分のサービスラインを一通り備えている点がユニークだと自負しております」

―― 「MARR Pro」 を導入された理由を教えてください。

香取 「当社はもともとGCAグループの一員として、『MARR Pro』の前身サービスの『レコフM&Aデータベース』を使っていました。デューデリジェンス業務だけを提供する場合には利用頻度はそれほど高くありませんが、FA業務を提供する際には必須ツールになっています。

 2023年に当社がグループから独立した際、契約しているさまざまなデータベースを見直しました。その中で日本企業のM&A案件を網羅的に把握できるかを基準に棚卸しを行い、最終的に残したのが『MARR Pro』です。ほかのベンダーも利用していますが、『MARR Pro』を見ておかなければ網羅的にはM&A案件は把握できないだろうというのが理由で、ほかに選択肢はありませんでした」

―― 普段は「MARR Pro」をどのように活用されていますか。

香取 「例えばFA提案をするとき、案件で買手候補を探索するとき、あるいはバリュエーション事例を調べるときです。FA提案書をつくる段階や実際の案件で買手候補を探索する段階では、例えば業界でどんな買い手が動いているかを示す資料を作るとき、弊社でのリストアップに加え、『MARR Pro』などを使い、『実際にこの業界で買い手になっている企業』『異業種から参入している企業』を洗い出し、リストに漏れがないかをチェックしています。そうすることで、クライアントに提示する買い手候補リストの精度を高めます。検索すればすぐに国内案件の詳細が引き出せる『MARR Pro』は、情報の抜けを防ぐために欠かせないツールです」

長嶺 「最も出番が多いのは、バリュエーションで類似取引比較法を使うときです。まず『MARR Pro』で国内案件を幅広く検索し、母集団を作ります。そのあと取引内容を確認し、評価対象に近い案件だけを絞り込んで、取引価格の水準を確認するという流れにおいて利用しています」

村越 「TOBの時に対象会社側のFAになったときは、公開情報が充実しているので役立つシーンが多いです。特に特別委員会においては、一般株主の利益を図る立場から、同種の案件について、『ほかの案件ではプレミアムはどれくらいだったのか』という確認が重要となりますが、『MARR Pro』を使うことで当該事案と類似しているケースではどうだったか、といった分析が機動的に実施できます」

―― 追加して欲しいとお感じになる機能はありますか。

長嶺 「例えば他ベンダーにはEV/EBITDA倍率などが自動で表示される機能があります。『MARR Pro』でも同じ指標が最初から見られると、初期的検討の効率が上がると思います。M&A実行時の対象会社の財務数値がもう少しわかるといいなと思います」

―― 機能面で、ほかにはご意見はございますか。

香取 「対象会社の売上や利益をPCに落とそうとすると、『MARR Pro』とは別の資料から数字を持ってこないといけません。もしそこができると非常に使い勝手の幅が広がるかなと思います」

長嶺 「前身の『レコフM&Aデータベース』時代からですが、案件概要が日本語で詳しく整理されている点がとても便利です。英語資料を読み解く手間が省けますし、概要を見れば取引内容がすぐに分かります。

 ただ、複数案件の概要を一括でExcelに出力する方法が見当たりません。今は左側の『詳細ボタン』を案件ごとにクリックし、表示された抄録をコピーしてExcelへ貼り付けています。もし抄録の一覧をそのままExcelに落とせれば、その後のキーワード検索や集計が一段と楽になると思います」

―― どれくらいの頻度で「MARR Pro」を活用していただいているのでしょうか。

村越 「案件次第になりますが、バリュエーションの案件であればとりあえず『MARR Pro』をいったん回して、類似の取引はないかどうかをまず見てみますし、セルサイドのFAでも同じような案件はないかとまず探します。どの案件でも1回は必ず回します」

長嶺 「特にFAやバリュエーションを担当するときに使うケースが多いです。デューデリジェンスだけなら、過去の取引事例まで細かく調べる必要がない場合もありますが、FAやバリュエーション案件では、どのようなプレーヤーが買い手となっているかや類似取引における取引価格の水準を押さえておくことが不可欠なので、頻繁に検索します」

―― 本日は、どうもありがとうございました。

(聞き手 レコフデータ 営業部)
MARR Pro(マールプロ)

「MARR Pro(マールプロ)」は、レコフデータが収集・蓄積するM&A 案件情報を、用途や目的に合わせてさまざまな条件で抽出し、分析できるM&Aデータベースです。

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