[M&Aトピックス]

(2022/04/01)

経産省が「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」を策定~与党も「M&Aの活性化」等、スタートアップ支援メニューの大幅拡充を提言


スタートアップの連携指針を整備

 公正取引委員会と経済産業省は3月31日、スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的とし、「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」を策定した。この指針は、公取委の実態調査で明らかとなったスタートアップと大企業との契約上の問題について、公取委が独占禁止法上の考え方を示し、経産省が問題解決の方向性を示すことを目的としたものになる。

 公取委が2020年に行った調査によれば、大企業のスタートアップへの出資に関し、NDA(秘密保持契約)を締結しないまま営業秘密の無償での開示を要請されたり、契約において定められていない無償での作業を要請されるなど、独禁法上、優越的地位の濫用のおそれがある事例があることが分かった。また、他の事業者との連携その他の取引を制限されたり、他の出資者からの出資を制限されるなど、排他条件付取引や拘束条件付取引に該当する事例も確認された。

 こうした問題を抑止するため、公取委と経産省は、スタートアップと出資者との取引・契約に係る問題について、独占禁止法上の考え方及び問題となり得る事例等を提示し、問題の背景及び解決の方向性をこのほど整理した。

 さらに、指針改定に当たって付されたパブリックコメントの回答も示された。事業者団体から、今後の大企業とスタートアップの連携に際して「当該指針の遵守を促すとともに、国費負担によるスタートアップへの専門人材の派遣など、契約当事者の能力の非対称性を是正するための支援措置を求める」といった意見が出ている。

スタートアップ支援策を提言

 また、与党も4月1日、スタートアップ・エコシステムの抜本強化に向けた提言案をまとめており、今後、提言を首相官邸に提出する。政府が6月をめどに策定する成長戦略への反映を目指す。

 提言案では、5年後の2027年に、国内スタートアップへの投資額を現状(0.8 兆円)の10 倍を超える規模の10兆円に伸ばすことを目標として掲げた。「アジア最大のスタートアップハブ」「世界有数のスタートアップ集積地」となることを目指すという。

 スタートアップ政策の一元的・効率的な実行のため、「スタートアップ担当大臣の選任及び関係閣僚会議の新設も目指す。スタートアップ促進の専門組織(組織長は次官級)の内閣府又は内閣官房への設置も行うという。

 また、スタートアップ企業からは、未上場株の流動性がなく、 非上場株の売買やエグジットが困難なことが成長の障壁になっているとの指摘が出ている。スタートアップを未上場段階において大きく成長させるとともに、次のイノベーションにつなげる等の観点から、諸外国で導入されている未上場株式の取引を目的としたセカンダリー市場等の制度化を推進していく。

 「M&Aの活性化」も同提言に盛り込まれた。 現在、IPO によるエグジットが偏重され M&A が少ない現状を変えていくため、アニマルスピリッツを促す会計基準 ( 「のれん」の会計処理等)の積極導入や、買収資金の調達がしやすくなるような公募増資の引き受けに関する ルール見直しも行うという。

 また、機関投資家からのVC投資促進のための施策も提言の大きな柱になる。国内VCへの投資を通じて、成長の原動力である国内スタートアップへの資金供給を拡大するとともに、そのための環境整備を図る必要性にも言及した。

■ 経産省・公取委「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」

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