はじめに
過剰債務問題や日中貿易摩擦の影響で中国経済は成長が鈍化しており、データサービスのFactivaによると2018年に全国の裁判所が受け付けた企業破産の申請件数は1万9000件と、2年前の3倍以上になっている。
中国の銀行が抱える不良債権残高も急増しており、当局も複数の貸出債権を一括で売却する「バルクセール」等による不良債権処理を促進しているものの、不良債権の新規発生の方が上回っており、増加に歯止めがかからない状況が続いている。
政府は不良債権処理加速のために海外投資家への規制緩和等を実施しており、商機とみた外資系金融機関や外資系ファンドが数年前より不良債権の購入を拡大している。
本稿では、中国における不良債権ビジネスの動向をご紹介したい。
中国における不良債権残高推移
2008年のリーマンショック後に中国政府は4兆元の景気刺激策や大規模な金融緩和を実施した。これらの景気対策は、中国経済だけでなく世界経済の回復に貢献した一方で、副作用として、不動産や鉄道・道路・空港などのインフラ、生産設備などへの投資依存が常態化し、地方政府や企業が多額の債務を抱え、習近平主席が“灰色のサイ”と呼ぶ過剰債務問題に繋がった。
こうした状況を踏まえ、2015年以降、政府は債務圧縮に向けた取り組みに着手している。地方政府等はインフラ投資等に必要な資金を外部調達に依存してきたため、2018年に入るとインフラ投資等が急減速し、景況感が軟化していたところに米中貿易摩擦が加わり、中国経済の減速は鮮明化している。
景気減速に伴って中国の銀行が抱える不良債権残高は膨らみ続けている。中国銀行保険監督管理委員会によると、商業銀行が抱える不良債権残高は2兆元(約30兆円)程度で、