レコフデータは1985年以降のM&Aデータベースを構築しています

キーワード 一覧

[M&Aスクランブル]

(2020/07/10)

コロナ禍に関わらず、6月の国内M&A件数が昨年より増加した背景

株式会社レコフデータ M&Aフォーラム 運営チーム
新型コロナ禍の影響で減少していた国内案件数が、6月には反転

 レコフデータが集計している公表M&A件数は、3月まで前年を大きく下回ることなく推移していましたが、4月、5月はそれぞれ3割近く減少しています。これはM&A件数ベースで7~8割を占める国内案件(IN-IN)が、同期間に前年同期比2割減少していたことが大きく影響しています。ただ、6月に入ると変化の兆しが出ました。IN-OUTOUT-INといったクロスボーダー案件は依然として低迷したままですが、国内案件は5月を底に増加に転じ、前年同期比でもプラスに転じました(図表1)。
 

国内案件が増加に転じた背景

 国内M&Aが増加に転じた背景としていくつかありますが、ここでは4点に絞って説明します。

 第一に、現在はM&Aが戦略上不可欠な手段として定着しているため、現段階では極端にM&Aが減少する状況はみられないということです。もちろん4月、5月の2割減は大幅な減少ですが6月に戻っていることを考慮すると継続して下がり続ける状況にはないと考えられます。6月の件数は、クロージング予定だった案件が後ろ倒しになった影響で一定数嵩上げされている可能性もありますが、これは裏を返せば契約締結にゴー・サインが出始めたとの解釈もできます。

 第二に、上場企業が子会社や事業を切り出して売却するカーブアウト系の案件が大幅に増加している点とグループ内M&Aが増加(図表2)している点です(ただし、グループ内M&Aについては公表M&A件数に含まれていません)。

 2つのデータはともに新型コロナ禍前から増加傾向にありました。つまり新型コロナ以前から売却・撤退や事業ポートフォリオの見直しというテーマは水面下で動いていたということです。今回の新型コロナ禍の影響で事業の見直しが行われることはほぼ確実であり、より加速することが予想されます。また、経済産業省も「事業再編実務指針(案)」を公表しており、国としてもこの動きをバックアップしていく方針です。

 

 第三に、危機をチャンスに変えていこうという試みが読み取れることです。レコフデータでは4月後半にMARR Onlineの会員等を対象に緊急アンケートを実施しました。新型コロナ禍の影響により4割超がM&A案件の中止を余儀なくされたものの、一方で好機とみた2割が買収検討を新たに開始しており、また、検討状況は従来と変わらないとの回答も2割強を占めていました。アンケートの詳細や分析は以下の記事を参照いただくとして、M&Aについてポジティブな結果が出てきたことに力強さを感じました(回答者の半数は事業会社所属)。


 もちろん、アンケートに回答いただいた方の母集団がM&A戦略に積極的な属性という一定の偏りはあるものの、M&A経験の少ない企業にもこの結果を参考にしていただきたいと考えています。ITバブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、欧州債務危機…など数年おきにショックはやってきますが、強い企業はその度に損益分岐点を下げて次に備える、一旦縮んで事業の選択と集中をする、買収の機会ととらえてM&Aを実行するなど独自の成長戦略を実行しています。今後そのようなM&A案件が公表されてくると考えています。これが次の4点目のポイントにもつながってきます。

 第四に、新型コロナ禍で経済がストップした4月以降の水面下での取り組みが、今後数カ月にわたって表面化してくるということです。前述のアンケートで、M&A戦略について今後数年間の優先度を聞きました(図表3)。

 

 これによると、緊急事態宣言下の4月後半でもM&A凍結は3%と少数です。M&Aは水面下で動くため、6月、7月に公表された案件の多くは新型コロナ禍前に立案されたものでしょう。したがって上記のアンケート(仮説)の答え合わせは今後表面化してくるものと思います。つまり、「少なくともM&Aに慣れている企業は、凍結はしないだろう」ということです。M&A経験の少ない企業では、危機になったり、M&Aで損失が出たりすると、関連予算の削減や取り組み自体を長期間凍結してしまうかもしれませんが、それは重要な機会をも失うことになります。M&Aに慣れている企業の担当者は、仮に一旦凍結したとしても、普段お付き合いのあるM&Aの専門家と定期的にヒアリングをして市場動向をモニターしていることでしょう。

今後は、M&A人材の育成がより重要になってくる

 以上みてきたように、国内M&Aの増加の背景としては、M&Aが戦略上不可欠な手段として定着したことに加え、新型コロナ禍で事業ポートフォリオ見直しの動きがさらに加速していく流れにあることが影響しています。また、強い企業は危機をチャンスに変え、買収の好機ととらえて動いており、M&Aの専門家と定期的にコンタクトをとって情報収集を続けています。ただ、一方でM&A経験の少ない企業は危機や損失発生に伴ってM&Aへの取り組みを凍結してしまうため、今後は、M&A巧者の企業との格差がより広がって行くことになります。

 また、M&Aによる事業の拡大(買い案件)だけではなく、新型コロナ禍の新常態に合わせた既存事業の見直し(売り案件)も必要となってきます。我々は、M&Aへの取り組みを止めることなく、今後は、買いと売りの両方の案件を行える人材を育成していくことがより重要となってくると考えています。

M&A人材の育成支援の試み

 レコフデータでは、M&Aに従事する人材の育成や市場の健全な発展に資することを目的として、M&Aフォーラムの事務局を担っており、この場を借りて、M&Aフォーラム「M&A人材育成塾」の活動を紹介させていただきます。M&A人材育成塾は、これまで大変多くの企業・受講者の皆様に支えられてきました。前回の第34回実践実務講座は、新型コロナウイルスの流行の危険性が高まっていた2月に開催され、M&Aの講義に集中できるか最後まで不安でしたが、受講者の満足度はとても高く、9割が5段階評価で4以上の評価でした。また、「この講義を同僚や知人に推薦しますか」という質問の回答にも9割から推薦するとの評価をいただいています。

 新型コロナウイルスの影響により、開催時期の延期を余儀なくされていましたが、「第35回M&A実践実務講座」を初のオンラインセミナー形式で開催することにしました。開催日は、7月29日(水)、31日(金)、8月5日(水)の3日間で、内容は次のとおりです。

第35回 M&A実践実務講座の内容
1.M&Aのマーケット動向、ソーシング(案件発掘)及び成功への戦略
2.M&A実践のプロセスと交渉戦略
3.バリュエーションの基本とプライシングの実務
4.M&A実務担当者が押さえるべき、M&A法務の「今さら聞けない基本のキ」
~M&Aの各フェーズで直面する実務の勘所とツボ~
5.買収先のコントロールと統合の組織・人事タスク ~クロスボーダーM&Aを題材に
6.ケース・スタディによるM&A総合演習(基礎編)
 オンラインセミナーなので、首都圏以外の方も参加しやすくなっています。ご興味のある方は、以下をご参照ください。コロナ禍の状況下ではありますが、事業会社の方々と同様に新常態に向け我々もチャレンジを続けてまいります。

▼第35回M&A実践実務講座についてはこちらから

バックナンバー

おすすめ記事

【カーライル山田代表が語る】パラダイムシフト迫られる日本企業と“ジャパンファンド”の投資戦略

座談会・インタビュー

[特集・特別インタビュー]

NEW 【カーライル山田代表が語る】パラダイムシフト迫られる日本企業と“ジャパンファンド”の投資戦略

山田 和広(カーライル・ジャパン・エルエルシー 日本代表兼マネージングディレクター)

【第3回】事業再生計画の策定②~債権者調整と再生スキーム~

スキルアップ

[【事業再生】事業再生案件のM&A実務~PEファンドによる事業再生プロセス(ニューホライズンキャピタル)]

NEW 【第3回】事業再生計画の策定②~債権者調整と再生スキーム~

長瀬 裕介(ニューホライズンキャピタル マネージングディレクター)

M&A専門誌 マール最新号

アクセスランキング

M&A専門誌マール

M&A専門誌マール

「MARR(マール)」は、日本で唯一のM&A専門誌で、「記事編」と「統計とデータ編」で構成されています。

レコフM&Aデータベース

レコフM&Aデータベース

「レコフM&Aデータベース」は、日本企業のM&Aなどどこよりも網羅的に、即日性をもって構築している日本で最も信頼性の高いデータベースです。

セミナー

セミナー

マールの誌面にご登場いただいた実務家、研究者などM&Aの専門家を講師としてお招きし、成功に導くポイント、M&Aの全体プロセスと意思決定手続き、実証研究から見た分析などについてご講演いただきます。

SPEEDA RECOF

SPEEDA RECOF

「SPEEDA RECOF」とは「レコフM&Aデータベース」と株式会社ユーザベースが開発・運営する企業・業界情報プラットフォームである「SPEEDA」がシステム連携します。

NIKKEI TELECOM日経テレコン 日経バリューサーチ

日経テレコン

2002年7月に、日本経済新聞デジタルメディアが運営する日経テレコンの「レコフM&A情報」を通じてM&Aデータの提供を開始しました。

M&Aに関するお問い合わせ、ご相談は
こちらからお気軽にお問い合わせ下さい。

お問い合わせフォーム