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[ポストM&A戦略]

2013年9月号 227号

(2013/08/15)

第57回 経営者リテンションにおける「プランB」

 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル)

  すべての計画には、重要な前提がある。その前提が崩れた場合に備えたバックアップの計画が「プランB」、あるいはコンティンジェンシープランと呼ばれるものである。
   買収先の経営者には、買収後に辞めてもらうこともあるが、買収後の一定期間について積極的にリテインする(辞めさせないで残ってもらう)ことも少なくない。買収先の経営者を適切にリテインすることは、特にクロスボーダーディールにおいて重要であり、時に難しい課題となる。その経営者リテンションにおける「プランB」とは、リテンションに向けていろいろ手を尽くしながらも、買収先の経営者、特にCEOが買収側の意に反して「悪いが、辞める」と言い出した時に備えるものである。
   今回は、この買収側が望んでいなかった買収先CEOの交代について、どのように考えて対処したらよいのか解説する。

買収先CEOから「悪いが、辞める」と切り出されると具体的に何に困るのか

  これまで本連載で、買収後の経営に必要な経営者をどのようにうまくリテインするか、あるいは買収先CEOを必要なタイミングでいかにうまく交代させるかについて説明した(第28回-29回「クロスボーダーM&Aにおける経営者リテンション」、第34回-35回「買収先のCEOの交代」参照)。今回取り上げるのは、これらとはまた違った状況、つまり買収側が意図していなかった経営者の交代である。「悪いが、辞める」の「悪いが」とは、そのことを意味している。
  もとより、買収後も続投して欲しい経営者をリテインする策には、「これで絶対安心だ」というものはない。雇用が本人の自由意志に基づく以上、果たして会社に残って働いてくれるかどうかは、その時の相手の事情や心情に大きく依拠するからである。誰にだって望んでいなかった方向に事情が変わることも、思ってもいなかった方向に自分から心変わりすることもあるものだ。3年の雇用契約にサインさせようが、多額のリテンションボーナスや長期インセンティブを付与しようが、辞めると決意した経営者を強制力を以って引き止めることはできない。
  だから、買収側の意に沿うようにしっかり働いてもらいつつ、「悪いが、辞める」と言い出さないように普段から手を尽くすことが大事なのはよくわかるけれども、おそらく同じくらい重要なことは、予め万一の事態に具体的に備えておくことである。

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