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[ポストM&A戦略]

2013年12月号 230号

(2013/11/15)

第60回 買収先の事業構造改革と組織能力の向上

 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル)

  多くのM&Aにおいては、現状の価値に何らかのプレミアムを付けて買収する以上、買収後の買収先の業績がこれまでの業績の延長線上にあるようでは投資が回収できなくて困ってしまう、というシンプルな理屈が成り立つ。この縛りから逃れることは、原理的に難しい。買い手にも株主がおり、もしかしたら中には「そこそこの業績でもいいじゃないか」という株主もいるかもしれないが、株主全体できちんと議論すれば、買収後の業績や企業価値が低くても構わない、という結論には到底ならない。つまり、「進め方に気を付けて、きちんと所期の成果を上げなさい」ということになる。
  「進め方に気を付けて」というのは、不確かなことを拙速に実行して買収先を台無しにしないように、ということであり、ここではマネジメント側(その多くはリテインした経営者)の知見が生きる。つまり、何をどうやればうまくいくのか、逆にどういうことは避けるべきなのかについてよく考え、買収側の要求水準を満たし、かつ実行可能な計画(典型的には「100日プラン」)を策定し、これにコミットするのが経営者というものである。そして、もし現経営者がそうしないなら、それができる経営者と交代させる、というのがガバナンスの原理・原則である。
  今回は、組織・人事の観点から、この買収先の事業構造改革と組織能力の向上について論じることとする。

M&Aと事業構造改革

  PEファンドが行うような、成長上の問題を抱える会社を買収し、必要な改革を行って企業価値を向上させるM&Aというものがある。もちろん普通の事業会社でもこのようなストーリーのM&Aを行うことはあるが、それよりも事業会社の場合は問題の少ない優良会社を買収するケースが多いと見ている。
  しかしそれでは、優良会社を買収した場合には買収後の改革は必要がないのかというと、デューデリジェンス(DD)の時には調べ切れなかった問題が、買収後にいろいろと出てくるのが普通である。とはいえ、これらはマネジメントの事項として経営者に解決を委ねても、一定期間内に解決される以上は問題がないし、むしろそのように買い手と買収先の経営者との間で役割を分担するのが適切であろう。
  しかし時としてこれらの問題は、思った以上に大きな問題であることがわかってくる場合もある。これを見事解決すれば買収先は「宝の山」となるが、もし解決できなければ、この買収を実施した眼目であるシナジー実現の妨げともなる。このことには、注意が必要である。
  また、これまで問題がなくても、買収に伴って買い手とのいろいろな連携が必要となり、買収先のこれまでの事業や組織運営のあり方を変えなければならないケースもある。
  従って、どのようなM&Aでも買収後の事業や組織運営のあり方については、改めてきちんと検討することが必要となる。
  もちろん、これまで買い手と買収先の経営者の間でPtoPミーティング(本連載第39回40回参照)を行っており、買収後の経営については大枠で合意しているはずである(もし不十分であれば、改めてそこから議論をスタートする)。そして、これを柱として、買収先と買い手によってさらに具体的な肉付けを行う活動が100日プランの検討である(本連載52回53回参照)。100日プランとは、一言で言えば、クロージング直後の約3カ月(100日間)を投資して策定される、買収後の基本計画のことである。

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