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[ポストM&A戦略]

2015年2月特大号 244号

(2015/01/15)

第74回 現地採用(上)

 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル)

  買収のスキームに関わらず、買収先の重要なポジションが買収に伴って空席となり、人材を手当する必要に迫られることがある。これには買収後に辞めてしまう場合もあれば、転籍して来れば問題がなかったのだが最後になって転籍して来ないことが明らかになる、というパターンもある。また、幹部若干名が欠けるのみのケースもあるが、カーブアウト(事業譲渡、切り出し)ではスタッフレベルを含めて合計数十人単位の欠員が生じる場合もある。必要なポジションである以上は、これを新規採用するのか、買い手の現地既存社員でカバーするのか、はたまた日本から送り込むのかが問題となる。
  買い手がすでに現地に一定規模のオペレーションを持っており、しっかりした人事部門もある場合には、ほとんどの採用は通常の現地人事業務と位置づけられるだろう。しかし、現地に拠点がなかったり、拠点はあるがしっかりした人事部門まではなかったり、買収事業のトップを務める人物の採用など現地人事部門が通常行う採用業務の範疇外のものだったり、あるいはとにかく採用数が多くて通常の人事部門の体制では対処できない場合もある。また、諸般の事情から、既存の現地組織と今回の買収先を敢えて別々にし、既存の現地組織をできるだけ関与させない(力を借りない)場合もある。
  今回からは、買収先の価値の維持・増大の観点から非常に重要な、現地採用について論じることとする。

M&Aにおいて現地採用が必要なことはいつわかるのか

  お金を出せば会社や事業は買えるが、社員がついてくるとは限らない。特に経営層でこれまできちんと機能してきた人材が欠けると買収後の影響が大きいため、経営層のリテンションはM&Aの定番検討メニューになっている(本連載第28回第29回「クロスボーダーM&Aにおける経営者リテンション」参照)。
  また、特定個人ではなくて、特定部門や社員全体のリテンションリスクに着目し、買収後に社員が買い手に不都合な退社を引き起こさないよう、対策を検討することがある。
  さらに、カーブアウト(事業譲渡、切り出し)では、買収先と社員個人の雇用契約先が異なるので、法令等により対象社員が自動的に移ってくるのでない限り、社員に転籍をオファーし、社員が自分の意思でこれを受諾するプロセスが必要になる。ここでは、クロージング時に特定重要ポジションが欠けないこと、あるいは大量の欠員が生じないことを売り手に確約させる交渉が行われることが一般的である。
  しかし、中にははじめから重要ポジションが欠けること、あるいは大量の欠員が生じることがわかっているディールもある。売り手からその条件で買ってほしいと持ちかけられ、それでも買い手が買いたいと思う場合である。売り手の事情(これには本人の事情も含む)によっては、売却対象事業のトップが来ない場合や、マーケティングやR&Dなど、買収先の事業をカバーしている本社機能が丸ごとディール対象外になっている場合もある。買収先の事業規模により、関係する本社機能が一切ついてこないと、欠員総数が100名近くになる場合もある。
  これは、この条件で買収を進めると決めた時点で欠員が生じることが決まるパターンである。
  もちろん、想定欠員=必要現地採用数、ではない。買収後の事業運営に照らして、まず買い手の考える欠員を明らかにする必要がある。消滅して問題のないポジションもあれば、買い手の既存現地組織で無理なくカバーできるものもあるだろう。また、現時点ですべて判断せず、欠員の一部には速やかに対応するが、残りについての結論はオープンにしておいて、適切なタイミングで改めて検討する対処の仕方もあるだろう。
  もうひとつ、買い手の事情で発生する採用ニーズがある。それは、買収後に買収先を適切にコントロールする人材を確保するためのものである。日本で採用して現地に送り込む場合も、現地で採用する場合もあるだろう。もちろん、日本人にこだわる場合も、日本人かどうかは問題でない場合もあるだろう。

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