工作機械メーカーの牧野フライス製作所は6月3日、アジア系投資ファンドのMBKパートナーズが同社に対し
公開買付け(TOB)を実施すると発表した。TOBは12月上旬までを目途に開始を目指すという。
昨年末にニデックが牧野フライス製作所に対して提案し、本年4月に実施した「同意なきTOB」は撤回に終わり、代わりにMBKパートナーズが登場、本件は日本における
同意なき買収の難しさを示すものとなった。今回の結果は、今後の日本のM&A、特に同意なき買収にどのような影響を与えるのだろうか。
M&A実務に詳しい東京国際法律事務所の共同創業者であり代表パートナーの森幹晴弁護士に、本件のインプリケーション、日本における同意なき買収のあり方の見通しについて聞いた。
時代は過渡期で、徐々に変わっていく
―― ニデックと牧野フライスの攻防戦が終結しました。今後は買収対象会社との事前の話し合いがない状態でTOBを提案することが以前より難しくなる可能性もあるかもしれません。事前の接触がない同意なきTOBの今後のあり方についてどのような印象をお持ちですか。
「上場企業のTOBを巡る攻防は、これまでの実務経験から常に3つの視点で整理・分析することが有効だと考えています。
具体的には、
■森 幹晴(もり・みきはる)
東京国際法律事務所の共同創業者、代表パートナー。クロスボーダーM&A、国内M&A・上場会社の公開買付け(TOB)、エネルギー・インフラ案件、ヘルスケア、テクノロジー、紛争案件、危機管理・コンプライアンス案件等で、日本企業やグローバル企業を代理する。日本経済新聞社の「2023年M&A弁護士ランキング 総合ランキングトップ20」にランクインするなど、各種メディアのランキングを受賞。主な著作は、『クロスボーダーM&Aの契約実務』(編著)(中央経済社、2021)、『場面別 公開買付けの実務』(中央経済社、2023)。