1. カーブアウトM&A案件の現状 「
カーブアウトM&A」とは、一般的に、売主グループが、一部の事業部門を切り出して買主に対して譲渡するM&Aをいい、統計のある上場会社による事業切り出し(事業売却、子会社売却)案件の数は、下表のとおり近年増加傾向にあるが、2022年は減少に転じている。
複数の候補先を対象とする入札手続が実施される案件や、外資系の
PEファンドによる大規模案件も増えており、近時の案件としては、KKRによる日立物流の買収、ベインキャピタル率いるコンソーシアムによる日立金属の買収、CVCキャピタルパートナーズによる資生堂のパーソナルケア事業の買収などが挙げられる。
案件数の増加傾向の背景としては、企業の持続的成長のためにコア事業の強化や将来の成長事業への投資に集中する選択と集中の流れの中で、ノンコア事業の撤退・売却が積極的に進められてきたことが挙げられる。
経済産業省においても
■筆者プロフィール■
佐藤 典仁(さとう・のりひと)
2007年東京大学法学部卒業、2008年 森・濱田松本法律事務所入所、2013年Northwestern University School of Law (LL.M.), Kellogg School of Management (Certificate in Business Administration) 修了、2013年Hengeler Mueller法律事務所デュッセルドルフオフィスで執務(~2014年)、2014年 株式会社日立製作所に出向(~2015年)、2017年国土交通省 自動車局 保障制度参事官室に出向(企画調整官)(~2019年)。2021年Thomson Reutersグループの国際的法律雑誌であるALB (Asian Legal Business)による”Asia 40 under 40”に選出される。日米欧アジアの各種M&A案件の豊富な経験を有し、PEファンドによるカーブアウト、MBO、複雑なクロスボーダー案件など、幅広く対応する。「M&A法大系」(共著、有斐閣、第2版、2022)、「アジアにおける多国籍カーブアウトM&Aの実務と留意点」(共著、旬刊商事法務2275号)などM&A、モビリティ関連の書籍・論文等多数。