[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2024年2月号 352号

(2024/01/15)

第226回 鉄鋼業界(高炉メーカー) ~海外需要の取り込みと脱炭素対応が課題

田城 謙一(レコフデータ 編集委員)
  • A,B,EXコース
1.はじめに

 鉄鋼メーカーには、鉄鉱石などの原材料を高炉(溶解炉)で製鉄し、鉄鋼を作り出す「高炉メーカー」と、鉄スクラップを電炉で溶かして鉄鋼を作る「電炉メーカー」があるが、以下では国内高炉メーカーを対象に、鉄鋼市場やM&Aの動向について解説する。

 高炉メーカーは、国内需要が縮小する中で、海外需要の取り込みと脱炭素対応が課題となる。2023年の年末には、日本製鉄が約2兆円で米USスチールを買収すると公表されたが、今後の成長と生き残りに向けM&Aの巧拙の影響が一段と大きくなっている。

2.鉄鋼市場の動向 ~国内需要は減少も、世界全体では今後も需要拡大

 鉄鋼製品は、自動車・電気製品などの耐久消費財、建設機械・産業機械などの生産財、ビル・橋梁などのインフラといった幅広い分野で使用されており、日本の高度経済成長期には「産業の米」と呼ばれていた。

 日本の粗鋼生産量の推移をみると、高度経済成長期に急激に増加しており、1973年には1億1932万トンまで増加した。その後1970年代の石油ショックによる石油価格高騰、1985年のプラザ合意による急激な円高進行、1990年代のバブル崩壊と金融危機は鉄鋼需要にも影を落とし、1990年代までの約30年間は、年1億トン前後の横ばいで推移している。

 2000年代に入ると、中国をはじめとする新興国需要が大きく伸び、日本の高炉メーカーが得意とする自動車鋼板等の高級鋼への需要の高まりを背景とした輸出の拡大により、2007年には1億2020万トンと過去最高水準まで増加した。しかし、2008年のリーマンショック以降は、中国メーカーの過剰生産や日中貿易摩擦による輸出量の減少などで需要は減少に転じている。さらに2019年以降は4年連続で1億トン割れの状況が続いている(図表1参照)。


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