[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2013年5月号 223号

(2013/04/15)

第100回 飲料業界 拡大する大手飲料会社の海外M&A

 マール企業価値研究グループ
  • A,B,EXコース

  サントリーホールディングスは2013年中に飲料子会社のサントリー食品インターナショナルを上場させる。海外の大型M&Aに向けて資金を確保することが子会社公開の狙いのひとつである。また、アサヒグループホールディングスはオセアニアや東南アジアを中心にM&Aによる拠点作りを急いでいる。大手飲料企業による海外M&Aは今後も拡大すると思われる。しかし、これらの大手企業を除けば、海外企業に比べて資金力に劣る日本の飲料メーカーが独自に海外市場を目指すのはかなりの困難が伴う。日本企業にとっては、アジア企業をはじめとした海外食品・飲料企業とのアライアンスが重要な選択肢となるのではないか。

主要飲料企業のM&Aの動き

■ サントリー食品インターナショナルが上場へ

   サントリーホールディングスはグループの飲料事業の中核子会社であるサントリー食品インターナショナルを上場させる。サントリーホールディングスの佐治社長は、2013年2月13日の記者会見で子会社上場の予定を明らかにした。2013年中にも東京証券取引所に上場される見通しである。
   サントリーといえば、2010年に破談になったキリンホールディングスとの経営統合交渉が記憶に新しい。国内食品最大手のキリンホールディングスと国内第2位のサントリーホールディングスの経営統合は、海外の巨大食品企業と伍して戦えるグローバル企業の誕生を期待させたが、経営統合比率等で折り合いがつかずに結局破談となった。飲料子会社の上場の決断は、サントリーグループが独自路線でグローバル戦略を展開していくことをあらためて内外に宣言したものといえるだろう。
   サントリーホールディングスによるM&Aでは、2009年にフランスの清涼飲料メーカー、オランジーナ・シュウェップスを3000億円で買収したのがこれまでで最大の案件である。その後は、ペプシコ製品を扱う米国企業からペプシコ製品の独占販売権の譲り受け、ペプシコ全額出資のベトナムの飲料・食品会社の買収など、提携関係にあるペプシコとの間でのディールがいくつか行われたが、オランジーナ・シュウェップスの買収に匹敵するような大型M&Aは行われていない。
   佐治社長は、M&Aがサントリーグループにとって重要な手段であり、上場によって調達した資金を飲料事業でのM&Aなどに充てる考えを明らかにしている。子会社上場後の次の一手が注目される。

■ キリンホールディングスは当面PMI強化
 

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