[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2013年6月号 224号

(2013/05/15)

第101回 通販・eコマース業界 ネットユーザーの拡大を背景に競争激化

 編集部
  • A,B,EXコース

  PC、スマートフォン、タブレット端末の普及によってeコマースの拡大が続いている。アマゾンなどショッピングサイトが勢力を伸ばす中で、カタログ通販会社ばかりでなく、スーパー・コンビニ等の流通小売、家電量販店などもeコマース戦略の強化に乗り出している。様々なプレーヤーが競争を繰り広げている通販・eコマース業界の現状と展望を有力アナリストに聞いた。

拡大するeコマースの市場規模
   2012年は通信販売業界にとって激動の年であった。

   3月にはニッセンホールディングスがコーヒー大手のユーシーシーホールディングス(UCC)の子会社でギフト販売のシャディを買収。UCCも45億円で議決権の20%に当るニッセンHD株を取得して、持ち分法適用会社に組み入れた。ニッセン(12年12月期売上高1766億1300万円)は、シャディ買収によって売上高が2295億円となり、アスクル(12年5月期売上高2129億円)を超えることになった。そのアスクル株42.6%をソフトバンクグループのヤフーが5月に取得している。7月には約4000億円規模の国内テレビ通販市場の約3割を占める最大手テレビ通販、ジュピターショップチャンネル(JSC)のM&Aがあった。親会社である住友商事がJSCの株式50%を米投資ファンドのベインキャピタルグループに譲渡、買収額は約1000億円に上った。さらに11月に入るとテレビショッピングの草分けともいえる日本直販を運営していた総通が民事再生法の適用を大阪地裁に申請した。負債総額は174億円。同社については、法人向けにコールセンター代行を営む東証1部上場のトランスコスモスがスポンサーとなり事業の再建を図ることになった。

   通信販売といえばカタログ、テレビ、ラジオ、新聞、折り込みチラシなどに商品の広告を出し、消費者から電話、FAXなどで注文を受け付けて商品を宅配便で送り届けるビジネスモデルだったが、近年では、インターネットを介して商取引が行われるeコマースが拡大してきている。

   「カタログ通販の代表ともいえるニッセンにしても12年12月期を見るとインターネットでの受注が5割を超えており、アスクルも直近は7割を超えてきています」と、ドイツ証券株式調査部シニアアナリストの風早隆弘氏は言う。

国内電子商取引市場規模動向    実際、経済産業省によると国内のeコマースの市場規模(コンテンツ配信などを含む)は、11年で8兆5000億円と、06年の4兆4000億円から5年でほぼ倍増している。

   「ほしい物を、ほしい時に、ほしいだけ、ほしい価格で買えるというのが一番の消費者便益です。しかし、カタログ通販はeコマースと比べてリードタイムが長く、商品が届くのにも時間がかかる。しかも選べるものは限定されます。もともとのビジネスの成り立ち方が年2回~4回消費者のもとに届けられる数百ページのカタログに載っている商品をオーダーされた分だけ売ればいいという発想です。eコマースの拡大で通販全体の市場規模が広がっていってもその中に占めるカタログ通販のシェアは落ちていかざるを得ないという非常に厳しい状況に立たされています」と、風早氏。

業種別動向

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