[視点]
2013年10月号 228号
(2013/09/15)
8月に毎年恒例の世界最大の経営学会Academy of Management(AOM)に行ってきました。M&Aは例年大きなテーマになるのですが、今回は意外にそうしたセッションが少なかった気がします。それはもしかしたらM&Aがトピックというより手段としてより認識され、例えば多角化、例えば新興国への参入というより大きなテーマに組み込まれているということかもしれません。
翻って最近の日本企業のM&A活動を見て思うのは、「○○年までにM&Aに何百億円使う」といった威勢のいい中期計画がとみに増えているのではないかということです。1つは(最近一段落した)円高ということがあったでしょうし、もう1つは国内市場の成熟化に伴い成長のためにはM&Aが不可欠だということだろうと思います。ただ、そこで気にかかるのは、買うためには売り手がいないといけないという単純な事実です。そして、新興国でがんばるのであれば例えば国内の事業は戦略的に売却することも考えているのだろうかということです。売却に後ろ向きの日本企業が多いという話をよく聞きます。
売却側の研究に関しては、実は学会でもまだまだ進んでない分野の1つです(リストラに関しての研究はいろいろありますが)。その大きな理由は買収側にどうしても注目が集まるというのもありますが、以前ハーバードのポーター教授が指摘したように、アメリカであっても「買うときは大騒ぎするが、売る時はこっそり」というメンタリティもあるでしょう。ただ、「こっそり」でも着実に売却を進める欧米企業に対し、日本企業の「売却戦略」はそもそも存在するのかという気がしてなりません。実際、アメリカ企業のM&Aの研究には「買収を多く行う企業は、同時にまた売却をも進めている」という指摘があります。一見M&A巧者だとみられがちなGE(ゼネラルエレクトリック)では、「GEはM&Aがうまいとはとても思えない。ただ、売る時はきっちり売っている」と自己評価していると聞いたこともあります。それは、失敗したときの見切りという問題もありますが、「ポートフォリオの組み替え」ということについて常に気を配っているということでもあります。
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