[M&A戦略と会計・税務・財務]
2013年10月号 228号
(2013/09/15)
1.はじめに
昨年来、米国の多国籍企業による租税回避行為が欧米で大きな社会問題に発展し、米国議会では対象企業の公聴会が開催され、欧州では英独財務相が多国籍企業の租税回避に対抗する共同声明を発表した事は記憶に新しい。欧州における債務危機の深刻化で緊縮財政を余儀なくされ、増税や社会保障費の削減が行われる一方で、合法的とは言え、租税回避スキームにより税負担を逃れている多国籍企業への不満が一気に噴出したことが背景にあると言われている。かつては、個人や事業者による、オフショアの銀行口座等への資産・所得の移転・隠蔽等への対抗措置がOECD並びに各国税務当局の課題とされていたが、近年はそれに加えて、金融機関を含む多国籍企業による、高度な国際的スキームや投資ストラクチャー(租税条約の濫用や移転価格の操作を含む)を利用した所得や費用の移転等への対応が問題とされるようになった。本稿では、近年の多国籍企業等による租税回避への国際的な対応の動向と、我が国における税務立法及び執行実務における対応の状況について解説し、企業活動に対する影響を検討する。
2.OECD租税委員会による「税源浸食と利益移転 (BEPS :Base Erosion and Profit Shifting)」対策措置と各国の協調的対応
OECDは2013年2月に「税源浸食と利益移転について(Addressing Base Erosion and Profit Shifting)」と題する報告書を公表し、所得浸食が、多くの国で税収、徴税権、税制の公平性に深刻なリスクをもたらすこと、国内の税基盤が浸食される方法は多数あるが、最も重大な所得浸食は、利益移転であること、越境活動への課税の根底にある主な特徴と、その特徴が生み出す所得浸食・利益移転の機会を明らかにした(OECD東京センター ホームページより)。
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