[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2014年1月号 231号

(2013/12/15)

第108回 医薬品業界 9兆円の「ぬるま湯」市場からの脱却が求められる日本の製薬企業

 編集部
  • A,B,EXコース

  パテントクリフの克服とがん領域などのアンメット・メディカル・ニーズの強化が求められる中で、日本の製薬企業はビジネスモデルの組み直しが迫られている。その意味で武田薬品の外国人社長就任人事が注目される。

再編統合が進んだが

  OTC(一般用医薬品)を含めた日本の医薬品市場規模は約9兆3000億円(2011年)で、そのうち医療用医薬品は約8兆7000億円となっている。世界の医薬品市場規模9529億ドル(同)のうち日本の医薬品市場は11.7%を占め、米国に次いで世界第2位という巨大な市場である。

  新薬メーカーはブロックバスターと呼ばれる大型医薬品の開発で収益を上げているが、そのブロックバスターには特許切れという崖が待ち受けている。欧米の製薬企業は年々巨額になっていく新薬の研究開発費を捻出するため、1996年にチバガイギー(スイス)とサンド(スイス)が合併しノバルティスとなったのをはじめ、99年にはヘキスト(独)とローヌ・プーラン(仏)が合併しアベンティスが誕生。同年、ゼネカ(英)とアストラ(スウェーデン)が合併してアストラゼネカに。2000年にはグラクソ・ウエルカム(英)とスミスクライン・ビーチャム(英)が合併してグラクソ・スミスクラインが発足するなどグローバルな統合を進めてきた。

  この結果、世界大手製薬企業の医薬品売上高順位を見ると、上位にはファイザー(米)、ノバルティス(スイス)、メルク(米)、サノフィ(仏)、ロシュ(スイス)、グラクソ・スミスクライン(英)、アストラゼネカ(英)といった海外メガファーマが並ぶ。

  日本でも新薬開発の競争力を高めるために、05年以降、再編・統合が進んだ。山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し、アステラス製薬が誕生したのが05年4月、同じ05年10月には大日本製薬と住友製薬が合併し大日本住友製薬が誕生。また05年9月に三共と第一製薬が経営統合し、第一三共(当時は持株会社)が誕生。07年4月には第一三共ヘルスケアがゼファーマを吸収合併。07年10月には、田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併し、田辺三菱製薬が誕生するなど業界地図を塗り替えるような再編が行われた。

  しかし、11年の売上高の世界ランキングを見ると武田薬品工業の世界第12位が筆頭で、世界30位以内に入っているのは、アステラス製薬(第17位)、第一三共(第19位)、大塚製薬(第20位)、エーザイ(第22位)、田辺三菱製薬(第26位)という状況。欧米のメガファーマには大きく水をあけられている。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事