[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2014年6月号 236号

(2014/05/15)

第113回 化粧品・家庭用品業界 M&Aプレーヤーのすそ野が広がっている

 マール企業価値研究グループ
  • A,B,EXコース

  食品や医薬品企業による海外企業買収が相次ぐ一方で、化粧品・家庭用品業界では、資生堂による米ベアエッセンシャルの買収を除いて、ここ数年大型M&Aは行われていない。他業界の企業による海外企業買収の先行事例が必ずしも思うような成果を上げていないことが、M&Aに対してやや慎重な姿勢をとる一因でもあるようだ。しかし、大型の案件は少ないとはいえ、化粧品企業の中にはここ数年で初の海外企業買収に乗り出したところもあり、M&Aプレーヤーのすそ野は徐々に広がってきている。

M&Aに慎重な化粧品・家庭用品の大手企業

  日本企業による海外企業買収はここ数年大型化している。とりわけ消費財やヘルスケア業種では食品や医薬品企業を中心に、海外企業の買収に巨額の資金を投じてきた。例えば食品では、JTが2007年に英国たばこ会社のガラハーを1.7兆円で買収し、キリンホールディングスは2011年にブラジルのビール・清涼飲料企業のスキンカリオールを約3100億円かけて買収している。医薬品では、武田薬品工業が2008年に米国バイオベンチャーのミレニアムファーマシューティカル、2011年にはスイスの製薬大手ナイコメッドと相次いで大型の買収を行い、合わせて約2兆円を投じている。

(図表1)食品、医薬品、化粧品・家庭用品の主要企業によるM&A投資額  こうした動きと対照的に、化粧品・家庭用品業界についてはあまり大きな動きはない。海外企業買収では、2010年に資生堂が米国の化粧品会社、ベアエッセンシャルを買収した例があるが、これ以外では新聞で大きな見出しを飾るような大型案件は出ていない。

  化粧品・家庭用品の大手3社(花王、資生堂、ユニ・チャーム)のM&A投資金額を、食品および医薬品の大手と比較すると、M&Aに対する慎重な姿勢が浮き彫りになる。過去10年間にM&Aに投じた資金が同期間の営業キャッシュフローの何%に相当するかを計算すると、食品3社(JT、アサヒグループ、キリンホールディングス)は平均で69.4%、医薬品3社(武田製薬工業、アステラス製薬、第一三共)では60.1%なのに対して、化粧品・家庭用品3社は36.6%と小さい。ベアエッセンシャルの買収に1800億円を投じた資生堂でも比率は48.9%にとどまる。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事

スキルアップ講座 M&A用語 マールオンライン コンテンツ一覧 MARR Online 活用ガイド

アクセスランキング