[M&A戦略と会計・税務・財務]

2014年6月号 236号

(2014/05/15)

第84回 クロスボーダーの役務提供取引と消費課税の動向

 荒井 優美子(税理士法人プライスウォーターハウスクーパース マネージングディレクター)
  • A,B,EXコース

1.はじめに

  2014 年4 月17日から18 日にかけて、第2回OECD 消費税グローバルフォーラムが東京で開催され、世界 86カ国の政府の参加を得て、国境を越えた取引に対して適用されるべき消費税の課税のあり方に係る枠組みの支持が表明された。

  OECD 消費税グローバルフォーラムとは、「OECD 国境を越えた取引に係る消費税ガイドライン」(INTERNATIONAL VAT/GST GUIDELINES February 2006 http://www.oecd.org/tax/consumption/36177871.pdf(以下、「本ガイドライン」))の進展について議論することを目的として開催されたものである(OECD 国境を越えた取引に係る消費税ガイドラインの成果に係る声明(仮訳)、以下「東京声明」)。本ガイドラインは「国境を越えた取引に対する消費税の課税のあり方が一律でないことから生じる二重課税及び意図せぬ課税の空白の問題に対処するための国際基準」として2006年にOECD租税委員会により報告書としてまとめられたものであり、「2015 年11 月におけるグローバルフォーラムの次回会合に本ガイドラインの完成版を提示するよう要請する」ことが東京声明において述べられている。

  上記のOECDの活動とは別に、OECD租税委員会による「税源浸食と利益移転 行動計画(Action Plan on Base Erosion and Profit Shifting)」(以下「BEPS行動計画」)では、「Plan 1 電子商取引課税」において、クロスボーダーの電子商取引に対する直接税・間接税のあり方を検討する報告書の作成を2014年9月にまとめることとしている。

  近年における商品のデジタル化の進展と経済活動に占めるサービスの比重の高まりと、クロスボーダーの電子商取引の市場の急速な拡大により、世界的なレベルで、クロスボーダー取引に係る消費課税の国際的合意形成に向けての取り組みが進展している。

  そして、そのような国際的潮流の中で、我が国でも消費税率の引上げに伴い、クロスボーダーの役務提供取引についての消費課税制度の検討が始められている。国境を越えた役務提供に関する課税権の確保、経済活動に対する中立性の確保、適正・公平な税務執行の確保等の観点から、2012年7月に有識者による研究会(「国境を越えた役務の提供等に対する消費税の課税の在り方について」、以下「研究会」)が組成され、2013年秋からは政府税制調査会の国際課税DG(ディスカッショングループ)として、新たな課税制度の検討が続けられている。本稿では最近の政府税制調査会の動向を基に、新たな消費課税制度の概要と企業活動に与える影響について解説を行う。
 

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