[M&A戦略と法務]

2015年8月号 250号

(2015/07/15)

株式買取請求事案に係る非流動性ディスカウント

~平成27年3月26日最高裁決定とその射程~

 滝 琢磨(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

第1 はじめに

  平成27年3月26日、非上場会社を消滅会社とする吸収合併に反対した株主がその非上場会社に対して株式買取請求権を行使した事案(以下「本事案」という)において、最高裁判所第一小法廷は、裁判所が収益還元法(注1)を用いて株式の買取価格を決定する場合は、非流動性ディスカウント(注2)を行うことはできない旨の決定(以下「本決定」という)をした。本稿においては、本決定がM&A実務に与える影響が少なからず想定されることを踏まえ、本決定の解説を行うとともに、その射程について検討を試みるものである。

第2 株式買取請求権の概要

  そもそも株式買取請求権とは、合併、会社分割その他の組織再編行為や事業譲渡等に反対する株主が、株式会社に対し、自己の有する株式を「公正な価格」で買い取ることを請求することができる権利である(会社法第785条、第797条等)。こうした権利が行使された場合には、反対株主と株式会社との間で、株式の価格の決定について協議が行われることが想定されている(会社法第786条第1項・第2項、第798条第1項・第2項等)。そして、反対株主と株式会社との間で組織再編行為等の効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる(会社法第786条第2項、第798条第2項等)。本決定は、かかる価格決定の申立てが行われた事案に関するものである。

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