[視点]

2024年6月号 356号

(2024/05/13)

株主アクティビストの日米企業に対する影響 -実証研究の分析から-

三和 裕美子(明治大学商学部 教授)
  • A,B,C,EXコース
1.はじめに

 2023年の3月期決算企業の株主総会では、株主アクティビスト(以下アクティビスト)などから計340件を超える株主提案が90社に出され、取締役選任や利益還元などに関して、賛成多数で可決される提案もあった(注1)。昨年の東証のPBR1倍割れ改善要請も受けて、アクティビストの主張は足元の株主還元にとどまらず中長期的な企業価値向上を目的とする内容など、その活動に変化も見られ、国内外の機関投資家の賛成票が高まる傾向にある。

 アクティビストは経営の効率化を進め、中長期的な企業価値向上をもたらすのか、あるいは経営のショートターミズムをもたらすのか。米国での学術研究においては、前者すなわち、アクティビストは経営者と株主間のエージェンシー問題を緩和する傾向にある結果を示している。本稿では日米の企業に対するアクティビストの影響について、実証研究の分析結果から考察する。

2.アクティビストによるエージェンシー問題の緩和(米国の事例)

 株主が広く分散した状態では、



■筆者プロフィール■

三和 裕美子(みわ・ゆみこ)三和 裕美子(みわ・ゆみこ)
明治大学商学部 教授 博士(商学)
I-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社代表取締役社長
1997年明治大学商学部専任講師、同助教授を経て2005年より同教授、現在に至る。米ミシガン大学客員研究員(2006年~2008年)。各種学会理事のほか、エーザイ株式会社社外取締役、ピジョン株式会社社外取締役、全国市町村職員共済組合連合会資金運用委員会委員、地方職員共済組合年金資産運用検討委員会委員、野村アセットマネジメント株式会社責任投資諮問委員・サステナブルアドバイザリーボード委員を務める。
研究分野は機関投資家とコーポレートガバナンス、機関投資家のエンゲージメントとESG投資、アクティビストの企業への影響など。主な著書として、『機関投資家の発展とコーポレート・ガバナンス』日本評論社(1999年)、『激動の資本市場を駆け抜けた女たち』白桃書房(2022年)などがある。

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、Cコース会員、EXコース会員限定です

*Cコース会員の方は、最新号から過去3号分の記事をご覧いただけます

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事