[視点]
2016年2月特大号 256号
(2016/01/19)
1. 海外事業投資において投資判断基準(ハードルレート)を持つことの重要性が高まっている
日本企業による海外企業のM&Aが拡大している。円安で円換算のM&A金額が膨らんだ面はあるものの、2015年は初めて10兆円を上回り、9年ぶりに過去最高を更新した。海外の成長市場を取り込むべく、内需企業を中心にM&Aに取り組む事例が目立った。
海外事業投資は大きな成長(リターン)が見込める半面、事業をとりまく不確実性(リスク)は国内投資よりもはるかに大きい。そのため、意思決定する際のベンチマークとして投資判断基準(ハードルレート)の導入を検討する経営者が増えている。投資の質を高め、競争力の向上につなげるためには、事業毎あるいは地域毎にROIC(Return on Investment Capital)に基づいたハードルレートの設定が有効である。投資実行後、ROICがハードルレートを下回ると判断した場合、その投資は見直されることになる。また、追加投資を決める際も、ハードルレートを見ながら計画をブラッシュアップしていくことができる。
このハードルレートに、資本コストを用いる日本企業が急増している。企業価値を高めるためには、投資に対してある一定の率を超える収益率を上げなければならない。資本コストは、その事業に投資する投資家がその企業のリスクに応じて要求する最低限の期待収益率であると考えられる。したがって、ハードルレートに資本コストを用いると投資家と経営者の評価軸が一致することになるため、両者の対話促進に有効に働くと期待できる。
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